研究課題
高齢化社会に伴う骨疾患の増加により、その疾患の治療対策が必要となってきている。この原因を明らかにして、骨疾患治療を推進するために、われわれの研究経験を基にして骨代謝における膜電位・イオンチャネルの役割を検討してきた。特に、今年度は、骨を壊す破骨細胞に着目して、研究をすすめた。 イオンチャネルを介した骨代謝における情報伝達機構を明らかにするため、破骨細胞機能に関与する新たなイオンチャネルの探索をおこなった。その結果、ライソソームに存在するカルシウムチャネルを新たな標的分子として同定して、その破骨細胞分化におよぼす影響を検討した。このカルシウムチャネルは、他の細胞組織と比較して、破骨細胞に豊富に存在しており、破骨細胞分化に伴って、発現量が高くなることが明らかになった。このカルシウムチャネルを前破骨細胞にて、遺伝子ノックダウンしたところ、破骨細胞分化が大きく阻害された。これは、破骨細胞分化に深く関与するNFATc1の核内移行を阻害することで引き起こされていた。そこで、破骨細胞分化時における細胞内カルシウム変動に、このイオンチャネルが影響を及ぼすかどうか検討したところ、このカルシウムチャネルはライソソームからのカルシウムイオン放出に関与しており、破骨細胞分化時におけるカルシウムオスシレーションを制御することがわかった。さらに、このカルシウム放出は、細胞内小胞体からのカルシウムイオンの多量放出を促すトリガーとして働くことを確認した。
2: おおむね順調に進展している
膜電位・イオンチャネルの役割について検討をすすめているが、過分極によって活性化されるイオンチャネルのひとつHCN (Hyperpolarization-activated cyclic nucleotide modulated channel)の役割については、順調に研究が進展している。また、膜電位を自由に制御するための方法を同時に開発しているが、これについても、予備実験段階で成功した。さらに、骨代謝に関与するイオンチャネルの新規同定として、ライソソームにあるカルシウムチャネルを同定することに成功した。
新たに、破骨細胞分化を調節するリソソームにあるカルシウムチャネルを同定することに成功した。これをさらに検討するために、検討項目「細胞内小胞器官におけるイオンチャネルの役割」を加えて、研究の幅を広げる。また、従来、着目しているイオンチャネルの役割、さらに膜電位の調節技術も推進していく。
新たに同定したカルシウムチャネルの役割の検討、細胞膜上電依存性イオンチャネルの役割、膜電位の調節技術の3点を中心として、研究費を使用する。大型研究機器は導入済みであるので、試薬・培養器具および動物実験試料を主な使途とする。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
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