研究課題
Prx1-Creにより、四肢および胸骨の間葉系細胞においてDullard遺伝子をコンディショナルにノックアウトしたマウスは、肥大軟骨細胞から骨への置換に異常があり、骨化遅延を示すことを見いだした。Dullardは、骨芽細胞及び軟骨細胞において、培養細胞を用いた過剰発現及びsiRNAによるノックダウンによって、BMPおよびTGF-βシグナルを阻害する因子である事を明らかにしている。そこで、Dullard (Prx1)変異マウスの骨格系の表現型が、Dullard欠損によってBMPシグナルが亢進される事に起因するかどうかを検討するために、BMP標的遺伝子の発現をin situ hybridizationおよび免疫組織化学的に調べることを試みた。新生マウスの成長板において、BMPシグナルの細胞内伝達因子であるSmad1のリン酸化を検出したが、野生型とDullard (Prx1)マウスの成長板で差は認められず、初代軟骨培養細胞(iMAC)を用いた解析でも、BMPシグナルの亢進を認めなかった。一方、iMACを用いた解析により、TGF-βシグナルが亢進している事が明らかとなった。TGF-βは、軟骨細胞に対して、肥大軟骨成熟化を抑制する事が知られているので、Dullard 欠損による骨格形成の異常は、TGF-βシグナルが亢進することによるのではないかと推測される。すなわち、Dullardは、BMPではなく、TGF-βシグナルを抑制する事により、成長板の軟骨細胞の発生を制御する事が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
Prx1-Creマウスにより、四肢および胸骨の間葉系細胞で、Dullardをノックアウトさせた変異マウスDullard (Prx1)の作製に成功した。形態学的及び組織学的解析により、Dullard (Prx1)マウスは、成長板の軟骨形成に異常が生じるために、骨化遅延が起きる事を明らかにした。BMPおよびTGF-βシグナルに関して、初代軟骨培養細胞を用いて、分子生物学的実験を行ったところ、Dullard欠損した軟骨細胞では、BMPシグナルは亢進しておらず、TGF-βシグナルが亢進する事を明らかにした。
今後、Dullard (Prx1)変異マウスの軟骨表現型の詳細な解析を行う。また、間葉系の細胞のうち、どの細胞種において、Dullardは最も重要な役割を果たすのかを検証するために、骨芽細胞特異的、骨芽前駆細胞特異的、軟骨細胞特異的Creマウスを用いて、それぞれの細胞種においてDullardをノックアウトさせていく。軟骨細胞におけるDulladによるTGF-βシグナルの抑制機構を分子生物学的に明らかにする。そのために、Dullardの結合タンパク質を質量分析計を用いて同定し、細胞内の膜構造における、Dullardによる新規TGF-βシグナルの制御機構を明らかにする。さらに、Dullardを骨格系の組織の様々な細胞種で欠損させる事により、それぞれの組織におけるDullardの役割を検討していく。
Dullardの骨芽細胞、骨芽前駆細胞、軟骨細胞特異的マウスを作製するための費用。およびそれらのマウスの解析に要する組織学的形態学的解析費用。DullardによるTGF-βシグナル抑制機構を明らかにするための分子生物学的及び生化学的費用。Dullardの結合タンパク質を同定するための生化学的解析費用。Dullardに関する研究発表および報告を行うための費用。
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http://www.tmd.ac.jp/press-release/20111011/index.html