研究概要 |
本研究において、Prx1-Creシステムによって、四肢および胸骨の間葉系細胞において特異的にDullard遺伝子を欠損させたDullard (Prx1)マウスが、骨化遅延を示す事を報告する。Dullard-LacZノックインマウスの成長板において、X-gal陽性細胞は、静止軟骨細胞、増殖軟骨細胞に検出されたが、肥大軟骨には検出されなかった。Dullard (Prx1)マウスは、メンデルの法則に従って誕生したが、誕生時の体重は減少しており、70%が、おそらく哺乳障害のために1日以内に死亡し、残りの30%も2週間以上生存せず、生存したマウスは、歩行障害を示した。Dullard (Prx1)マウスは、四肢の長管骨および胸骨の長さの減少および骨化遅延を示した。一方、骨化遅延は、Osx-Creにより骨芽前駆細胞でDullardを欠損させたDullard (Osx)マウスでは認められなかった。胸骨の組織学的解析の結果、Dullard (Prx1)の胸骨は、肥大軟骨で占められていた。骨化遅延は、軟骨細胞におけるDullard遺伝子欠損によるBMPまたはTGF-betaシグナルの亢進に起因するのではないかと考え、未熟関節軟骨細胞 (iMAC)を用いたレポーターアッセイを行った結果、Dullard (Prx1) iMACでは、BMPシグナルは亢進しておらず、TGF-betaシグナルが亢進していた。また、TGF-betaの標的遺伝子であるSnoN, Smad7の遺伝子発現も亢進していた。さらに、Dullard (Prx1) iMACは、TGF-beta処理に強く反応し、円形から繊維芽細胞様の細長い形態に変化した。これらの結果から、Dullardは、軟骨細胞においてTGF-βシグナルを抑制する事により、内軟骨性骨化を制御する事が示唆される。
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