研究課題/領域番号 |
23791629
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
武内 章彦 金沢大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70512218)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 骨肉腫 / 幹細胞 / 糖化蛋白受容体 |
研究概要 |
1.骨肉腫培養細胞における幹細胞マーカー、RAGE(後期糖化産物受容体)発現の解析:ヒト骨肉種細胞株(HOS、MG63、SaOS2)における幹細胞マーカー(CD133、CD24)およびRAGEの発現をフローサイトメトリーを用いて解析したが、陽性率は0.1%以下であった。そこで、RAGE遺伝子を導入し、同様に解析すると、その陽性率は著明に上昇した。2.セルソーティング:RAGE遺伝子導入後のヒト骨肉種細胞株(HOS、MG63、SaOS2)のRAGE陽性細胞をフローサイトメトリーでセルソーティングを行った。セルソーティングしたRAGE高発現細胞と陰性細胞をチャンバースライド上で培養し、CD133・CD24などの幹細胞マーカーとRAGEの発現の解析を蛍光免疫細胞染色で行った。RAGE高発現細胞では、RAGEのシグナルに一致してCD133とCD24の発現が亢進していた。一方陰性細胞では、CD133、CD24、RAGEいずれの発現もほとんどみとめられなかった。3.スフィアアッセイ:RAGE高発現細胞と陰性細胞をUltra Low Attachment Culture Dishで培養すると、陽性細胞ではHOS、MG63、SaOS2いずれも球状のコロニー(スフィア)を形成したが、陰性細胞ではスフィアの形成をみとめなかった。4.脂肪分化誘導能と薬剤耐性試験:移植実験を行う前に細胞の性質を詳細に解析した。RAGE高発現細胞と陰性細胞を脂肪分化誘導培地で培養すると、陽性細胞はHCS LipidTOX陽性となり脂肪産生が確認されたが、陰性細胞の陽性率は低かった。RAGE高発現細胞と陰性細胞に各濃度(0.1-20μM)のシスプラチンを添加しWSTアッセイを施行すると、RAGE陽性細胞は、有意に陰性細胞よりも薬剤耐性能が高かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨肉腫細胞株における幹細胞マーカー(CD133、CD24)およびRAGEの発現は低かった。しかし、RAGE遺伝子導入により、幹細胞マーカーの発現の亢進とRAGEとCD133,CD24の共発現が確認できた。このことから、RAGEが幹細胞マーカーを誘導した可能性が示唆された。さらに、RAGE高発現骨肉腫細胞は、スフィアアッセイ、脂肪分化誘導、薬剤耐性試験において、がん幹細胞様の性質を持っていることが分かった。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、当初の予定通りRAGE高発現細胞におけるSOX2、OCT-4、Nanogの発現を免疫沈降法で解析し、さらに、網羅的遺伝子発現解析アレイを行う。また、RAGE遺伝子発現をsiRNA, shRNAで抑制し、スフィアアッセイ、脂肪分化誘導、薬剤耐性の抑制効果を解析する。加えて、ヌードマウス移植により、in vivoにおけるがん幹細胞様の性質の有無を検討する。すなわち、RAGE発現の有無による腫瘍塊形成能を比較する。平成25年度は、手術切除標本中のRAGE、CD133、CD24の発現を免疫染色で検討し、臨床成績との相関を解析する。すでに、平成23年度に予備実験を行い、化学療法無効例、再発病巣、転移病巣においてRAGE、CD133、CD24の発現が高い傾向にあることを見い出している。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に研究費を適正に使用したが、7500円の未使用額が生じたため、平成24年度に繰り越した。平成24年度は、骨肉腫細胞株の培養(幹細胞用培養液を含む)のための培養液・シャーレなどに10万とした。免疫沈降法キット(SOX2、OCT-4、Nanog:RSD社)は約13万×3で39万とした。遺伝子解析発現解析用のGenechip human Gene 1.0 ST Array(Affymetrix社)は試薬も含めて30万とした。実験用動物・飼育費:使用マウスは40匹を最低使用するため、飼育期間が1か月より10万と概算した。さらに情報収集・成果発表のため、国内(東京と名古屋:年2回)・国際学会(アメリカ:年1回)およびポスター代を計上した。
|