研究概要 |
1.骨肉腫手術標本の幹細胞マーカー、RAGE(後期糖化産物受容体)発現の解析:骨肉腫の手術標本を、抗RAGE抗体、抗CD133抗体で蛍光免疫染色を行った。その結果、RAGEとCD133のシグナルは一致し、転移のある症例は転移のない症例よりも有意にRAGE/CD133の高発現群が多く、また、初発よりも再発の病巣は、高発現群が有意に高かった。さらに、転移のない症例では、RAGE/CD133の低発現群は高発現群よりも有意に生存率が高く、RAGE/CD133の発現が予後予測因子として有用である可能性が示唆された。 2.RAGE遺伝子導入骨肉腫細胞株(HOS,MG63,SaOS2)のSOX2、OCT-3/4、Nanogの発現の解析:RAGE遺伝子導入骨肉種細胞株のRAGE陽性細胞とコントロール細胞からRNAを抽出し、real-time PCRで解析し、Saos2細胞では、コントロールと比べ、RAGE陽性細胞では、SOX2, OCT-3/4, Nanogの発現が高い傾向にあった。 3.RAGE高発現細胞の樹立:RAGE遺伝子導入細胞から、RAGE高発現細胞を樹立するために、ヒト骨肉種細胞株(HOS)にRAGE遺伝子導入後、limited dilution法により高発現株を樹立。 4.RAGE高発現株のマーカーの発現の解析:フローサイトメトリーにてCD133とCD24の発現を解析すると、コントロール細胞よりもCD133、CD24ともに有意に発現が高く、RAGE遺伝子の発によりこれらの発現が誘導された可能性が示唆された。 5.RAGE発現細胞を標的とした治療法確立の可能性:RAGE安定発現株である線維肉腫細胞(RAGE遺伝子導入HT1080)に対して、低分子ヘパリンを添加することで、抗腫瘍効果を示しさらにRAGEの下流シグナル(Cdc42, Rac1, NFκB)が抑制されることを見出した。
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