研究課題
昨年度に引き続き、同一のヒトから正常脂肪細胞、MDM2が高発現する脂肪肉腫(ALT)細胞を採取し培養した。それぞれから間葉系幹細胞を作成し分化能を比較することで、腫瘍の遺伝子異常が細胞の分化に対してもつ影響を調べた。すなわち、MDM2の増幅によるp53遺伝子の抑制が分化能にどう影響するかを調べ、多くの悪性腫瘍で抑制されたp53機能が、分化誘導療法による治療のターゲットとして利用できないか検討した。各間葉系幹細胞をMesenchymal Adipogenesis Kit (Millipore)を使用して、脂肪分化誘導し、脂肪分化誘導後21日以降にOil red O染色を行った。いずれからもOil red Oに染まる多数の脂肪滴を含んだ脂肪細胞が多数、分化誘導された。色素の溶出液を比色定量し得られた吸光度のデータをStudent'st検定で比較した。溶出液の吸光度の平均値(正常脂肪 vs ALT)は、0.522 vs 0.412(p<0.01)(n=4,duplicate)で有意差をもって正常脂肪群の吸光度が高く、分化傾向の強いことがわかった。また、各間葉系幹細胞をOsteogenesis Culuture Kit (Cosmobio)を使用して、骨分化誘導した。骨分化誘導後7日目以降にALP染色、21日目以降にAlizarin Red S染色を行った。いずれもALP染色で青色に、Alizarin Red S染色で赤色に染まる像が得られ、骨分化が認められた。ALP染色およびAlizarin Red S染色後、マクロ写真からImage Jを用いて特定色域面積を測定し、Mann-Whitney検定で評価した。ALP染色後、特定色域面積の平均値(正常脂肪 vs ALT)は、363 vs 15235 (p<0.01)(n=4,duplicate)であった。Alizarin Red S染色後、特定色域面積の平均値は、242 vs 2587 (p<0.01)(n=4,duplicate)でった。以上より、骨分化においては有意差をもって肉腫群の骨分化傾向がより強いことがわかった。 同一ヒト個体の正常脂肪組織とALT由来MSCの脂肪および骨分化能の比較を行い、脂肪分化能は正常脂肪群で高く、骨分化能はALT群で高かった。
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