研究概要 |
急性脊髄損傷に対する骨髄間質細胞 (BMSC)移植は、組織修復・運動機能回復に寄与すると考えられているが、この機序については不明な点が多い。平成23年度は、急性脊髄損傷後急性期におけるBMSC移植が、macrophage活性に与える影響に特に注目し検討した。 SD ratを用い、急性胸髄損傷モデルを作成し、損傷後3日目に1×106個のヒトBMSCを損傷部に移植し経時的に評価した。 BMSCは移植後1週では損傷部周囲に分布していたが、5週ではBMSCは11.9%残存し、損傷部を含めた頭尾側方向に分布がみられた。 分布したBMSCは、神経グリア系細胞の間隙に入り込むように存在しており、分化した細胞は確認されなかった。BMSC移植群は、損傷後1週で組織修復作用をもつalternatively activated macrophage (M2 type; arginase-1, CD206で標識)の発現上昇(0%→32.2%)および組織障害性作用をもつclassically activated macrophage (M1 type; iNOS, CD16/32で標識)の発現減少(93.4%→11.7%)、TNFαおよびIL-6の発現制御、IL-4およびIL-13の発現上昇がみられ、損傷後後1週以降での運動機能の改善、損傷後5週でのcavity areaの縮小、、損傷部周辺におけるRT-97, GAP-43の発現上昇がみられた。 脊髄損傷後のBMSC移植は、急性期においてmacrophage分画をM1からM2 typeにshiftさせることによって炎症環境を変化させ、このことが亜急性期および慢性期における組織修復・軸索再生・運動機能回復に有利となる環境を形成すると考えられた。
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