酸性環境下にて、ヒト骨肉腫細胞(U2OS、MG63)で発現遺伝子を検討したところ、CAIX、PDGFR、VEGFの遺伝子の発現が増加していた。特にCAIX(Carbonic Anhydrase)は、酸性環境下にて発現誘導されるHIF-1αによって制御されている。しかし今回、酸性環境下にてCAIX mRNAの上昇がPCRにて確認できた。また、蛍光免疫染色においても高率にタンパク発現が認められた。また、CAIXは様々な腫瘍種でも発現が報告されているため、CAIXを腫瘍内における酸性環境下での標的として絞り、以後の研究を進めた。 まず、CAIXの機能抑制は骨肉腫細胞に対しても抗腫瘍効果が期待できるかどうかを検討するため、供与されたCAIXに対する阻害剤3種の抗腫瘍効果を検討した。マウスに背部皮下に骨肉腫細胞を生着させ、3種の阻害剤を腫瘍内注入したところ、一部化合物に腫瘍の増大抑制効果を認めた。そのため、CAIXに対する抗体は、CAIXの機能阻害効果も併せ持つ抗体がもっとも望ましく、かつ相乗効果が期待できると考えられた。しかし、集積性とCAIX阻害効果の両立が得られなければ、集積性の良好な抗体を結合させたリポソームを、ナノ磁性体およびドラッグのデリバリデバイスとして利用をする。 今後、CAIXの腫瘍集積異性を検討するため、市販リポソームに抗CAXI抗体を結合させ、マウス皮下に骨肉腫細胞を生着させた後に、リポソームをマウスの尾静脈より注入し、腫瘍への集積を検討する予定である。集積性が良好であった場合、磁性体封入リポソームやドラッグデリバリ用のリポソームに抗体を結合させ、磁性体や薬物の腫瘍への集積を検討する予定である。
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