研究概要 |
ラット椎間板組織に1.3MP、1Hzの圧負荷を加え培養すると椎間板に軽度の変性を再現することが可能であった。この椎間板変性は、髄核細胞の減少、細胞内空胞を有する脊索由来細胞の減少といった髄核組織の変性が主体であり、線維輪組織の変性所見は乏しいものであった。また、髄核細胞では、アグリカンの合成減少とMMP-3,13の合成増加が観察され、線維輪細胞では、アグリカン、2型コラーゲンの合成増加とMMP-3,13の合成増加が観察された。以上の組織学的、生化学的評価から初期の椎間板変性を再現しているものと考えられた。 次にこの動的圧負荷が、椎間板にどのように伝達されるかを解明するために、メカノレセプターであるintegrin α5β1に注目した。このintegrin α5β1は、免疫組織学的検討にて、すべての髄核細胞、線維輪細胞に発現していることが明らかとなり、機能実験を行った。競合阻害薬を投与し同様の動的圧負荷を加えると、髄核細胞の減少や脊索由来細胞の減少といった所見が減少し組織学的評価では、有意差をもって変性スコアを改善した。さらに、上述の椎間板基質合成についても、髄核細胞のアグリカン、2型コラーゲンの合成増加とMMP-3,13の合成減少、線維輪細胞においては、アグリカン、2型コラーゲンの合成増加効果は維持され、MMP-3,13の合成抑制効果が観察された。また、興味深いことにintegrin α5β1の合成は圧負荷により刺激され、阻害剤投与にて合成刺激効果が消失した。以上の結果よりintegrin α5β1は、動的圧負荷によりpositive feedback機構を有して発現が誘導され、このintegrin α5β1は椎間板に動的ストレスを伝達し合成抑制、基質分解促進といった初期椎間板変性の組織学的、生化学的な変化を引き起こすことが明らかとなった。
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