独自に開発した硬組織接着性多糖誘導体リン酸化プルラン(特願 2010-036350号)を用い,生体親和性が高く,かつ骨に対し強固に接着する生体吸収性骨セメントを創製した。これまでの研究でリン酸化プルランは骨の主成分であるハイドロキシアパタイトに対し,優れた接着性を示し,種々のリン酸カルシウムと組み合わせることで骨形成を促進することが分かった。本研究では動物モデルを用いて骨折治療におけるリン酸化プルランの有用性を検討することを目的とした。まず、リン酸カルシウムを混和したリン酸化プルラン(以下リン酸化プルランセメント)に骨形成成長因子であるBMP-2を含有させ、その徐放能について検討を行った。既存のTCPやPMMA骨セメントと比べ、長期間にわたり優れたBMP-2徐放を認めた。次に、骨折創外固定モデルの作成において、ウサギ尺骨欠損モデルを用いて検討を行った。その結果、骨折部にリン酸化プルランセメント、あるいはリン酸化プルランセメントにBMP-2を混和した群において、コントロール群、既存の人工骨(TCP)使用群と比べ優れた骨形成能を認めた。動物実験レベルではあるが、本材料が骨折治療に有用であることが証明され,今後ヒトへの応用が可能となれば,既存の治療法の幅を大きく広げることが期待される。
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