研究課題/領域番号 |
23791646
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
亀井 直輔 広島大学, 病院, 病院助教 (70444685)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 再生医療 / 再生医学 / 神経科学 |
研究概要 |
【目的】脊髄損傷に対する新たな治療アプローチとして,マイクロRNA-210 (miR-210)に着目し,脊髄損傷におけるmiR-210投与の血管新生および神経再生効果について明らかにすることを目的とした。【方法】マウス胸髄損傷モデルを作製し,損傷24時間後にmiR-210を脊髄損傷部へ注入した。またコントロールとして,無機能siRNAや軟骨特異的なmiR140を投与する群を作製した。1)脊髄損傷部でのmiR-140 とmiR-210の発現をreal-time PCRで評価した。2)血管新生の評価として, CD31による免疫組織染色を行った。3)脊髄機能評価として,Basso Mouse Scale (BMS)による後肢運動機能スコア,経頭蓋電気刺激による後肢からの運動誘発電位を損傷1~42日目に評価した。4)miR-210のターゲット遺伝子の評価として,損傷脊髄のreal-time PCRを行い,特にターゲット遺伝子候補の発現評価を行った。【結果】1)マイクロRNA投与24時間後に,siRNA群に比べmiR-140の発現がmiR-140群で約60倍,miR-210の発現がmiR-210群で約400倍であり,著明な発現上昇を認めた。2)miR-210群では他の2群と比較してCD31陽性血管を多く認めた。3)miR-210群では,BMSは損傷5日目以降,運動誘発電位は7日目以降で他の2群より有意な改善を認めた。4)GPD1Lの発現が損傷3日目にmiR210群で有意に抑制されていた。【考察】投与したmiR210は脊髄組織に取り込まれ,新生血管と脊髄機能回復を促進した。発現抑制を認めたGPD1Lは,様々な血管新生促進因子の上流に存在するHypoxia-inducible factor 1 (HIF1)の発現抑制に関与しており,HIF1を介した血管新生機序が推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脊髄損傷モデルに投与を計画していたいくつかのマイクロRNAの投与実験を行い、miR-210が修復促進に効果があることを明らかにし、その血管再生効果についても明らかにすることができた。初年度に計画していた実験の中で、in situ hybridizationによる空間的発現評価がまだできていないが、その分次年度に計画していた機能評価についてはすでに終了しており、全体として研究は順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
損傷脊髄の修復に効果的なマイクロRNAの選定と投与時の機能評価については初年度で達成できたため、今後はマイクロRNA投与時の脊髄修復メカニズムを明らかにする研究を行っていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
マイクロRNA投与時の脊髄修復メカニズムの解明のために遺伝子発現の網羅的解析のためのマイクロアレイの費用やその後の遺伝子および蛋白レベルでの発現解析に必要な試薬などに研究費を使用する。
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