研究概要 |
哺乳動物での適切な胸髄損傷モデルは存在しないため、まずはコモンマーモセット、アカゲザルを用いた脊髄損傷モデル作成のために、最適な麻酔条件、IH impactorを用いた中等度胸髄損傷モデル、術後管理の条件についての詳細な条件設定を確認した。全身麻酔の設備や術後管理は集中的でかつ多くの人的労力が必要であり、統計学的に適切な数のモデルを管理するにはさらなる工夫が必要である。また従来のIH imapactorを用いての脊髄損傷モデルの作成は、実験の動物の大型化がすすむと使用が困難であり、現在バルーンを用いた脊髄損傷モデルの作成やクリップモデルの確立を同時にすすめている。 また、BBB scoreとASIA scaleを改良した下肢運動スケールを作成し、ほ乳類における脊髄損傷後の運動機能評価法について検討した。 また、中等度損傷モデルにおいて重要となる、脊髄損傷後のアロデニアについての適切な評価法が確立していないため、ラット・マウスを用いて、von Frey test, Thermal testの正常、損傷群での基礎データの収集をおこなった。 マウスにおいては、anti IL6 receptor抗体を用いた胸髄損傷治療後のアロデニアに対する治療効果を、上記データをもとに解析し、発表した。私たちの評価法にて、異常疼痛が治療により軽減され、いわゆる脊髄損傷後のアロデニアが改善していることを、客観的なスケールを用いて表すことに成功した。 コラーゲンフィラメントを用いた胸髄損傷アカゲザルに対する移植治療に関しては、現時点では術後の長期生存が困難なため、移植後の短期間での組織評価にとどまったが、急性期においてはげっ歯類同様に良好な軸索の再生が確認された。短期評価のため、下肢運動機能の回復については未確認なデータであり、今後の検討課題である。
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