研究課題/領域番号 |
23791648
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐藤 亮祐 徳島大学, 大学病院, 医員 (30581152)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 小胞体ストレス / 軟骨無形成症 |
研究概要 |
四肢短縮型の低身長をきたす疾患でその最たるものに軟骨無形成症がある。軟骨無形成症はFGFR3という細胞の増殖・分化に関与する膜タンパクの異常により起こり、異常の部位の違いにより軽症型の軟骨低形成症から最重症型の致死性軟骨異形成症までさまざまな症状がある。現在、それらの病因としてシグナル過剰説が一般的に説明されているが、この説では変異部位の違いによる重症度の違いを完全には説明できず、別の病態の存在があると考えられる。近年、小胞体はタンパク合成の場だけでなく、生体の機能に重要な働きをしていることがわかり、小胞体機能の破綻(小胞体ストレス)と疾患発症の関係が注目されている。FGFR3のような膜タンパクは小胞体で作られるため、FGFR3の変異による折りたたみ異常が小胞体ストレスをおこす可能性がある。本研究では変異型FGFR3によって生じた小胞体ストレスによる細胞死が病態に関与していると考え、それを検証した。当該年度における研究において、現在報告されている全ての変異型FGFR3を細胞に発現させたところ、さまざまな変異型のFGFR3ではシグナル過剰が起こっていないことがわかった。またそれらの変異型FGFR3では細胞膜まで輸送されずに小胞体への蓄積やタンパク分解系の指標である脱糖化が認められ、小胞体ストレスを起こしていることがわかった。軟骨無形成症の病態における小胞体ストレスの関与を示した報告は国内外に例を見ない。FGFR3変異遺伝子の軟骨無形成症における小胞体ストレスの関与が明らかになれば、小胞体ストレスを抑える化学シャペロンを投与する治療法など病態に即した新しい治療法の開発に繋がる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度において本研究でたてた仮説を支持する結果、すなはち従来説であるシグナル過剰説では重症度の違いを完全には説明できないこと、さまざまな変異型FGFR3は小胞体に蓄積され、小胞体ストレスを起こしていることが明らかになった。またその研究成果を国際学会で発表した。ひきつづき研究を進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度においてさまざまな変異型FGFR3では従来から言われているシグナル過剰説が成立しないこと、またそれらの変異型FGFR3が小胞体ストレスを起こしていることが明らかになった。成長軟骨は他の組織と異なり、血流のない組織である。すなはち常に低栄養や低酸素状態であり、さらにメカニカルストレスがかかることから、細胞には強いストレスがかかっていることが予想される。その状態にさらに変異型のFGFR3の蓄積による小胞体ストレスがかかると細胞が障害されるのではないかと考えられる。今後の方針として変異型FGFR3により小胞体ストレスを起こした細胞が細胞死に陥るかどうかを調べる。また細胞死に陥った細胞を小胞体ストレスを制御することにより細胞死から回復できるかどうかを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度の繰越金に関しては細胞培養にかかる消耗品の維持にあてる。また軟骨の性質をもった細胞で実験を行うことを計画しており、マウス初代軟骨細胞もしくは未分化な細胞をインスリンやBMP2などで軟骨細胞の性質をもつ細胞に分化させて実験を行う。そのためマウスの維持・管理費やBMP2などの分化誘導剤の購入にもあてる。次年度の計画だが、成長軟骨の環境を再現する必要があり、低栄養や低酸素状態にしたりSTREXを用いてメカニカルストレスを加えた状態で変異型のFGFR3によりさらに小胞体ストレスがかかるとどうなるかを調べる必要がある。まず変異型FGFR3による小胞体ストレスで細胞死が誘導されるかどうかをRT-PCRでXBP1のsplicing, CHOPの誘導をみる。transfection効率の問題が生じてくる可能性があるため、必要に応じてはエレクトロポレーションもしくは遺伝子導入に用いる専用の試薬を購入する。また細胞細胞がどの程度生存できるかをMTT assayで、どの程度細胞死を起こすかどうかをannexin-V assayやTUNEL asssayを用いて調べる。DAPIもしくはHoechst33258dyeを用いて核染色を行い、核の形態を観察することによっても細胞死について調べる。小胞体ストレスによって細胞死を起こした細胞を4-フェニル酪酸などの化学シャペロンにより、小胞体ストレスによる細胞死から回復できるかを調べる。本研究で得た結果をまとめ、成果を国内・国際学会で発表し、論文にまとめる。
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