研究課題/領域番号 |
23791649
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田代 泰隆 九州大学, 大学病院, 特任助教 (70567362)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 関節鏡手術 / Augmented Reality / 可視化 / 膝関節手術 / 前十字靭帯 |
研究概要 |
3次元ヴァーチャル・リアリティ画像を実鏡視映像へ重ね合わせるAugmented Reality(拡張現実)技術を用いて、正常組織の奥に存在する関心領域をリアルタイムに透見可能にする関節鏡手術支援システムの開発に取り組んできた。 仮想病変を埋め込んだ位置条件の異なる実体型模型の術前CTを撮影し、そのDICOM画像データを3次元医用画像解析ソフトに取り込み、Segmentation(輪郭抽出)を行って、3次元骨モデルを構築した。光学式センサPolarisにて体表に配置した表面マーカー位置を計測し、実座標系と3次元画像の仮想座標系の間で点対点剛体レジストレーション(位置合わせ)を行った。関節鏡機器に搭載した光学式マーカーとギアを用いて、位置・方向の検出と、斜視鏡の回転角度の算出を行うことが可能になった。 In vitroでの仮想手術では、光学式センサによる位置情報と、関節鏡の位置情報および術中画像情報をワークステーションにリアルタイムに取り込んで自動処理を行い、病変や重要血管の3次元CT情報・映像を術者の必要に応じて関節鏡モニタの視野にリアルタイム重畳表示し、カメラ移動に伴う視野移動に対しても同時に追従させることが可能であった。 本システムの精度・性能を評価するため、レジストレーションの精度(FRE)・術中重畳精度(TRE)・Augmented Realityによる関心領域の描出率・カメラ移動に伴う視野移動に対する描画速度を判定し、その結果をコンピュータ支援手術の学会に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究進行の結果、関節鏡手術においてAugmented Reality技術を用いて関心領域を可視化する上で、光学式センサによる実座標系の位置情報と術前3次元画像データの位置情報を位置合わせし、関節鏡映像に重畳することが可能になった。 すでにIn vitro実験では一定の重畳精度を得ることに成功し、In vivo環境へ試験的に導入しているが、臨床環境ではより細径で広角の内視鏡を使用することによる内視鏡画像のゆがみや関節の移動や変形に伴う重畳精度のばらつき・低下も新しい問題として生じてきた。 そこでIn vivoでの内視鏡画像のゆがみを補正するプログラムの更新や導入、画像の移動や変形に伴う位置情報のずれを高速度・高精度で処理可能な3次元画像処理ソフトウェアを導入することで、高い重畳精度が実現でき、本技術を臨床症例広く応用することが可能になると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度 臨床環境でのより非侵襲的で多様な術式に対応できるよう、径4.0mmもしくは2.7mmのより細径かつ広角の内視鏡を使用する。細径・広角の内視鏡使用による内視鏡画像のゆがみや関節の移動や変形に伴う重畳精度のばらつき・低下の問題を解決するため、Invivo系での内視鏡画像のゆがみを補正し、画像の移動や変形に伴う位置情報のずれを高精度で処理することにより、重畳精度を向上させる。レジストレーション精度で2.0mm、実重畳精度で3.0mm程度の精度を目標として達成できれば、臨床症例の術式へ応用し、その成果を学会へ報告する。平成25年度 関節鏡手術におけるAugmented Reality(拡張現実)技術を用いた病変可視化による手術支援システムを臨床症例へ積極的に応用し、その成果をコンピュータ支援手術の国内・国際学会および論文誌へと報告する。
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次年度の研究費の使用計画 |
3次元画像処理・編集ソフトウェアを更新し、細径・広角内視鏡使用による内視鏡画像のゆがみや移動・変形に伴う重畳精度のばらつきを改善することにより、臨床環境での重畳精度のばらつきの問題を解決し、臨床症例への広い導入を行い、研究を遂行・完成する予定である。
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