3次元ヴァーチャル・リアリティ画像を実鏡視映像へ重ね合わせるAugmented Reality(拡張現実)技術を関節鏡手術に応用し,肉眼で判別困難な病変部や関心領域をリアルタイムに可視化する関節鏡手術支援システムの構築を行った。本研究では、光学式センサを用いて実座標系と、術前CT/MRIによる3次元画像の座標系を表面マーカーにより簡便に位置合わせし,患者や患肢の動きへの連動と侵襲を伴わないレジストレーション,より細い径・狭い環境下での関節鏡手術に対応可能な専用のデバイス作製に取り組み,精度検証を行った。 個々の対象患者の大腿表面形状に合わせて曲率を変化させ、CAMにて切削加工・作成して大腿へ設置できる骨や臓器への刺入が不要な非侵襲的リファレンスデバイスを開発した。関節鏡用ナビゲーションカメラとしてより径の小さな4mm径の斜視鏡用にセンサを取り付け、絶対回転角の計測のため、斜視の回転を得るためのギアを作製、設置した。光学式三次元位置計測装置のマーカーにてカメラ姿勢をリアルタイムにトラッキングし,カメラ本体に対する斜視鏡の回転角をロータリーエンコーダにて計測、斜視内視鏡用カメラキャリブレーションにより、30°斜視鏡へ対応した。 Augmented Realityによる離断性骨軟骨炎病変の重畳では,病変の局在に関わらず描出可能で,視野の移動に8-10フレーム/秒ので追従可能で,レジストレーション精度(FRE)は0.94mmと良好、2Dモニタ上での重畳精度は約3mm,3D重畳精度は約5mmだった。前十字靭帯再建の際の解剖学的な靭帯付着部についての3次元CADモデルを用いた手術シミュレーションにも応用を行った。 今後の課題:関節鏡の中心視野では歪みが小さく精度も良好だが、周辺視野では最大で1.7倍の歪みを生じるため、レンズの歪み補正を本システムに実装することが今後必要である。
|