研究課題/領域番号 |
23791657
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
水野 洋介 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (30406532)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マイクロRNA |
研究概要 |
平成23年度はまず、PPARγとOsterixをRNA干渉法でノックダウンさせたサンプルを用いて既に得られていたmiRNA発現アレイデータについて詳細に解析した。Osterixをノックダウンさせたサンプルで発現が顕著に上昇していた2つのmiRNA(miR-X, miR-Y)に特に着目し、以後の解析を行った。これらの発現変動を定量的RT-PCRを用いて詳細に確認した結果、miR-Xでは発現アレイと同様の発現量上昇が確認された。しかしmiR-Yの発現変動は確認されなかったことから、miRNA発現アレイデータには擬陽性データも含まれ、発現アレイで検出されたmiRNA発現変動量はその都度定量的RT-PCRで確認する必要性が認識された。また、miR-Xをコードしているホスト遺伝子の転写量も、成熟miRNA-Xの発現変動と同様に上昇している事が定量的RT-PCRにより確認できた。次に、miR-Xホスト遺伝子自体がOsterixによる発現制御を受けているかを調べるために、ホスト遺伝子上流プロモーター領域の転写活性を測定した結果、Osterixのノックダウンにより転写活性の増大が認められた。さらに、miR-Xを細胞内に導入後に骨芽細胞分化刺激を加えた結果、骨芽細胞への分化が抑制される事が示された。このことから、miR-Xは骨芽細胞分化を抑制する性質を持ち、その発現はOsterixによって負の制御を受けていることが初めて示された。年度当初は更に別の転写因子をノックダウンしたサンプル、及び分化誘導刺激後早期に採取したサンプルを用いて発現アレイ解析を行う計画であった。しかし、上述した一連の成果が得られたため、これを早期に論文としてまとめていく必要が生じた。このため、本成果に関して論文化に必要な付加的データを収集するための実験を集中的に行う方向に切り替えて、研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写因子がmiRNA 転写調節を行うことを調べるためのレポーターアッセイは平成24年度に実施する計画であった。しかし、OsterixがmiR-Xの転写調節を行うデータに基づいた新知見については早急に論文化を行っていく必要性が高いことから、レポーターアッセイについては一部平成23年度に前倒しして実施した。また、同定されたmiRNAが骨芽細胞分化に実際に影響を及ぼすかどうかを調べる実験も平成24年度に行う計画を立てていたが、同様の理由から平成23年度に前倒しして実施した。一方で、C/EBPβやSmad1などの転写因子についてもRNAiでノックダウンして発現アレイ解析を行う計画を平成23年度中に含めていたが、Osterix とmiR-Xに関する系統的な新知見が得られたため、これを早期に論文化する方向性により注力した。これにより、新たなmiRNA発現アレイ実験については、平成24年度に行うこととした。全体の目的に照らし、新知見を蓄積して成果として論文にまとめていく必要性も加味した上でこれらを総合的に考えると、本研究は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
miR-XとOsterixの関係性について、補完的なデータを引き続き収集し、早期に論文にまとめていく方向性を考える。また、C/EBPβやSmad1などの転写因子についてもRNAiでノックダウンして発現アレイ解析を行う実験系を行い、これらの転写因子の制御を受けるmiRNAの解析を進めていく。miR-XとOsterixの関係性については、平成23年度中に、次年度の予定に含めていた解析項目の一部を前倒しして実施した。このため、それらの実験系の有効性を早期に確認できたので、他に同定されたmiRNAについても速やかに検証実験を行う体制が既に整ったと言える。これまでのPPARγとOsterixのノックダウンサンプルアレイデータに加えて、C/EBPβやSmad1などのノックダウンサンプルアレイデータを産出し、発現変動するmiRNAを検出して、その転写因子とmiRNAとの制御関係と、それが脂肪、骨芽細胞分化に及ぼす影響を順次検証していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度中に計画していたmiRNA発現アレイ解析実験は平成24年度に行う。このための研究費は平成23年度から繰り越したものを使用する。平成24年度に当初より計上していた予算は、まず、miR-XとOsterixとの制御関係と骨芽細胞分化への影響を調べた内容で論文化するのに必要な付加的データを得るのに必要な実験のために使用する。さらに、新たなアレイ実験で得られる、発現変動が検出されるmiRNAについて、転写因子との発現制御関係を調べるためのDNA結合確認実験やレポーターアッセイを当初の計画通り行っていく予定である。
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