研究課題/領域番号 |
23791662
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
高田 伊知郎 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (50361655)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 間葉系幹細胞 / 転写 / エピジェネティクス / PPARγ / BMP2 |
研究概要 |
マウス骨髄由来の間葉系幹細胞であるST2細胞を用いて、脂肪細胞分化、骨芽細胞分化におけるBMP2とPPARγ活性のクロストークに関し、マーカー遺伝子発現、エピジェネティク制御の両面から検討を行っている。 ST2細胞においてPPARγリガンド及びBMP2を添加し、ChIPアッセイを用いて脂肪細胞分化誘導因子aP2プロモーター、骨芽細胞分化誘導因子Runx2プロモーター領域のヒストン修飾変動を検討した。詳細な検討の結果、PPARγリガンド処理3時間後にBMP2処理を4時間行った場合、BMP単独で4時間処理した場合よりも、Runx2プロモーター領域において、転写活性に関連する修飾ヒストンH3分布が増加した。更にBMP2を3時間処理後、PPARγリガンド4時間処理を行った場合では、PPARγ単独で4時間投与した条件よりもaP2プロモーター領域において転写活性化型修飾ヒストンH3が低下する傾向が得られた。 これらの結果は、骨芽細胞分化マーカー遺伝子Runx2や脂肪細胞分化マーカー遺伝子aP2のmRNA発現変動と類似している事を、定量的RT-PCRを行う事で確認する事が出来た。また、ST2細胞の培養において各リガンドを順番を変えて添加した場合も同様な結果が得られる事を、骨芽細胞で特異的に発現するアルカリホスファターゼ活性、脂肪細胞の中性脂質を染めるオイルレッドO染色で確認を行った。 この様に、PPARγとBMP2シグナルのエピジェネティクス制御を介した不可逆的な転写活性化反応に示す条件を得る事に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度において、ST2細胞におけるChIPアッセイや定量的RT-PCRから最適な実験条件を得る事に成功した。今後、次世代シーケンサーを用いたChIPseq解析の為に、サンプル抽出を行う予定である。この点に関してはおおむね順調に進展している。また、他の脂肪細胞や骨芽細胞分化マーカー遺伝子発現変動に関しても順次検討中であり、確実に結果が出ると考えている。しかしながらプロテオミクス手法を用いたBMP2シグナル依存的なPPARγ修飾の同定に関しては未だ検討中であり、その点が今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
BMP2やPPARγシグナル依存的に変動する修飾ヒストンの同定に成功したため、今後は次世代シーケンサーを用いた大規模解析を対象とするサンプル抽出を行う。特にBMP2とPPARγリガンドを添加する順番で異なるシグナル強度を示す修飾ヒストンについて着目する。 プロテオミクスに関しては研究計画の規模からPPARγのみに着目する事にした。今後、抗体カラムの作成及びST2細胞の大量培養、PPARγ抗体カラムを用いたタンパク質抽出、プロテオミクス解析を中心的に遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度中にChIPseqやプロテオミクス等の解析を行う予定であったが、予備実験の結果を得るまでに時間がかかった状況もあり、平成24年度に持ち越しとした。平成23年度から持ち越した予算は、ChIPseqおよびプロテオミクスの外注等に使用する予定である。これらは高額になる事が予想されたため、今回の持ち越しとなった。またその他、骨代謝に関連する遺伝子改変マウスの飼育、解析等にも使用予定である。 試薬類の購入は主にChIPseqとプロテオミクス解析の関連試薬、細胞培養の為の血清・培地購入に使用する。試薬類等は十分入手可能であり、全体において計画の遂行に支障はない。
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