研究課題
当該研究は脊髄損傷後の新規診断方法の開発および新たな治療戦略の発展につながる基礎研究を行うことを目的とする。マウス脊髄損傷モデルを用い脊髄の損傷状態と炎症状態の変化を野生型、インターロイキン1遺伝子欠損(IL-1KO)マウスで比較することにより、損傷から再生治癒にいたる損傷状態のモニターをマイクログリア(MG)/マクロファージ(MF)の活性化を指標にして明らかにする。さらに,ヒト骨髄間葉系幹細胞(hMSCs)の移植による脊髄の損傷抑制および再生促進作用とMG/MFの活性化がどのように連関するか調べる。脊髄損傷モデルを用いたin vivoの実験からIL-1は炎症反応の減少を介して運動機能を改善させ脊髄損傷を抑制した。野生型、IL-1KOマウスから初代MGの細胞培養を作成し、これらを用いたin vitroの実験からはIL-1はMGの古典的活性化、代替経路型活性化の両方に関与する事が示唆された。当該年度はさらに、脊髄損傷動物に対しhMSCsを脊髄内に移植し、運動機能、脊髄損傷や神経再生の改善が認められる事を免疫組織化学的に確認した。次にhMSCsをマウス脊髄損1日後に移植したところ移植7日までに有意に運動機能の改善を認め,損傷領域の減少を認めた.この作用は凍結融解し変性させたhMSCsでは再現できず,移植されたhMSCsの生体内における応答が重要であることが確認された。IL-1を含む炎症性・抗炎症性サイトカインの遺伝子解析を行ったところhMSCsを移植した動物はマウスのIL-1, TNFalpha, IL-10およびTGFbetaの有意な減少を認め,抗炎症性のIL-4の有意な増加を認めた。今後さらなる解析を行い脊髄損傷後に移植したhMSCsの免疫応答に関して、MG/MFの活性化様式に着目して詳細な作用機序の解明を行っていく予定である。
すべて 2013
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Acta Neurochir Suppl.
巻: 118 ページ: 49-54
10.1007/978-3-7091-1434-6_8.