研究課題
これまで、本申請者は、1)Wnt5aが骨芽細胞、滑膜細胞より産生される事、2)Wnt5aは破骨細胞の分化を強力に促進する事、3)破骨細胞前駆細胞特異的にRor2を欠損させたマウスでは、骨吸収が低下する事により骨量が著しく増加する事、4)関節リウマチ(RA)モデルマウスにRor2のデコイ受容体を投与すると関節破壊が顕著に抑制される事を報告してきた。即ち、Wnt5a-Ror2経路をターゲットとした新規骨代謝改善薬の可能性を世界に先駆け報告した。論文を投稿し、査読を受けた結果、骨芽細胞特異的にWnt5aを欠損したマウスの硬組織の表現型を解析することを求められた。 そこで、平成23年度は、骨芽細胞特異的にWnt5aを欠損したマウス(Wnt5aΔOB/ΔOB)の作出と硬組織の解析を行った。 Wnt5aΔOB/ΔOBは、Wnt5a fl/+マウスとosterix- Creマウスを交配することによって作出した。Wnt5aΔOB/ΔOBは、大腿骨の成長発達に異常を示さなかった。しかし、マイクロCT撮影の結果、Wnt5aΔOB/ΔOBではコントロールと比較して海綿骨量の低下を認めた。骨形態計測の結果、Wnt5aΔOB/ΔOBは骨形成が抑制されており、破骨細胞数も減少していた。8週齢のWnt5aΔOB/ΔOBの大腿骨組織切片を解析した結果、破骨細胞数の減少を認めた。以上の結果より、骨芽細胞の分泌するWnt5aが破骨細胞分化を促進する可能性が示唆された。
4: 遅れている
昨年度の研究計画では、Wnt5aの転移性骨腫瘍に対する役割を解析する予定であった。しかしながら、先行論文のreviseに追われ昨年度の研究計画を十分に遂行する時間が得られなかった。 骨親和性のある株化腫瘍細胞を取得、増殖させ-80℃で保存した。また、Wnt5a発現レトロウィルスベクターをラージスケールで増殖させ、純化し-30℃に保存するにとどまった。
昨年度計画していた実験計画の続きを行う。具体的には、骨親和性のある株化腫瘍細胞に対し、(1).レトロウイルスベクターを用いWnt5aを過剰発現し、リアルタイムPCR法、ウエスタンブロット法およびフローサイトメーターを用いRANKの発現を検討する。さらに、(2).Wnt5a/ 受容体に対するshort hairpin RNA導入による機能喪失実験を行う。Wnt5aの機能喪失によりRANKの発現に影響があるかどうかを検討する。(3).(1)の系に各種阻害剤を添加し、腫瘍細胞におけるRANKの発現にどのシグナル経路が深く関わっているかを検討する。 腫瘍細胞に発現するWnt5aの増減により、骨芽細胞への遊走能が変化するかを検討するために、ボイデンチャンバーを用いた実験を行う予定である。ボイデンチャンバーを用い、下層にマウス頭蓋冠より調整した骨芽細胞を培養し、上層にはWnt5aを過剰発現/機能喪失させた腫瘍細胞を培養する。過剰発現/機能喪失に用いるベクターは、IRES-eGFPが組み込まれている。よって、下層のGFP陽性細胞の数を計測する事により、腫瘍細胞の骨芽細胞への遊走能が変化したかどうかを解析する予定である。
本研究計画を遂行するには、以下に記入した研究経費が極めて必要である。消耗品は主に細胞培養関連の器具、試薬、分子生物関連試薬に支出される。細胞培養関連の器具、試薬は腫瘍細胞株の培養に必要である。分子生物関連試薬はin vitroにおける、Wnt関連遺伝子の過剰発現実験、機能喪失実験を行うために必要である。本研究遂行にあたり、リコンビナントサイトカイン、トランスフェクション試薬、逆転写酵素および抗体などが日常的に不可欠である。具体的な研究費の利用計画は、以下のとおりである(単位千円)。分子生物学用試薬500 細胞培養用試薬250 プラスチック製品200 抗体250マウス(骨芽細胞調整用)500 合計1700。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Nat Med
巻: 18 ページ: 405-412
10.1038/nm.2653
Inflammation and Regeneration
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http://www.mdu.ac.jp/about/top/004102.html