研究課題/領域番号 |
23791670
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
寺村 岳士 近畿大学, 医学部, 講師 (40460901)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ES細胞 / iPS細胞 / 間葉系幹細胞 / 軟骨再生 / 分化誘導 |
研究概要 |
ES細胞、iPS細胞は多能性幹細胞と呼ばれ、細胞移植医療用資源として有利な性質を多く有しているが、これを安全かつ効果的に使用するためには目的の細胞に『分化誘導』することが必要である。しかし、神経細胞や心筋細胞など一部の細胞を除き、誘導方法が確立されておらず、運動器再生医療において有用な軟骨細胞や間葉系幹細胞(MSCs)を効率的に誘導する方法については殆ど研究がなされていない。特に、軟骨細胞は発生学的にMSCsに由来することが知られていることから、高純度の軟骨再生を得るためには効果的なMSCs誘導方法が必須である。そこで本研究ではMSCs誘導に焦点を当て、効果的な分化誘導法の開発と運動器再生医療領域における多能性幹細胞の臨床的価値を正確に評価することを目的に、1)ウサギES細胞を用いたモデル研究、2)ヒトiPS細胞を用いた非臨床応用研究を計画した。 計画初年度には、1:ウサギES細胞を用いたモデル研究と、2:ヒトiPS細胞からのin vitro、in vivoでのMSCsの分化誘導法の確立を実施した。研究1:について、極低酸素状態がMSCsの選択的誘導に有効であること、極低酸素状態では未分化細胞の増殖が抑制され、テラトーマ形成の防止に寄与することを明らかにした。また、平成25年度に予定している移植試験の一部を前倒しで実施し、GFP導入後に同法で誘導したMSCsが軟骨損傷の再生に寄与することを確認した。本研究成果は原著論文として投稿し、既に受理されている。また、研究2:について、研究1で用いた方法を使用し、ヒトiPS細胞から実際にMSCsの誘導が可能であること、ヒトiPS細胞を免疫不全マウスに移植し体内でMSCsを誘導できることを明らかにした。本研究成果は特許として申請するとともに(平成22年度、本研究計画申請中に実施)、学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、1:ウサギES細胞を用いたモデル研究と、2:ヒトiPS細胞からのin vitro、in vivoでのMSCsの分化誘導法の確立を計画した。研究1:についてはウサギES細胞からMSCsを効率よく誘導する新規の分化方法を開発し、これを、計画を前倒しする形で移植することに成功した。研究2:についてはin vivo、in vitroでMSCsが安定的に得られることが確認でき、かつ、ヒト正常骨髄間葉系幹細胞に近いマーカー発現パターンを示すことを明らかにした。網羅的遺伝子発現解析などは予算の都合上実施することが出来なかったが、当初計画および本来の目的は概ね達成することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、平成24年度にin vitroでの分化誘導法の開発を進めることを予定している。具体的には、様々な分化誘導因子がpc-MSCsの出現頻度や後の性質に与える影響を観察し、最適な誘導条件の決定を目指すとともに、前年度に作成したin vivo 誘導MSCs、ヒト正常BMMSCsとの網羅的な比較を実施する。誘導方法については、今年度ウサギES細胞を用いて確立した方法を基本として、これに改良を加える形で進める。また、当初計画記載のとおり、近年の研究によってMSCsの分化する過程には上皮-間葉転換(EMT)が深く関わっているという知見に基づき、EMT促進因子の添加や遺伝子改変などを実施する。平成23年度に極低酸素状態でMSCsの誘導が促進されることを確認したが、この過程でEMTに関連する因子の発現が変動するという結果も得ており、来年度以降にMSCsの分化機構の解明や誘導法の改良に結びつけたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には幹細胞、分化細胞培養試薬購入費、解析用試薬、実験動物購入費を計上している。しかし、23年度に繰り上げで動物実験の多くを実施したため、繰越し予算と合わせて、23年度に実施出来なかった網羅的発現解析を実施する予定である。
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