研究課題/領域番号 |
23791670
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
寺村 岳士 近畿大学, 医学部附属病院, 講師 (40460901)
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キーワード | ES細胞 / iPS細胞 / 間葉系幹細胞 / 軟骨再生 / 分化誘導 |
研究概要 |
ES細胞、iPS細胞は多能性幹細胞と呼ばれ、細胞移植医療用資源として有利な性質を多く有しているが、これを安全かつ効果的に使用するためには目的の細胞に『分化誘導』することが必要である。しかし、神経細胞や心筋細胞など一部の細胞を除き、誘導方法が確立されておらず、運動器再生医療において有用な軟骨細胞や間葉系幹細胞(MSCs)を効率的に誘導する方法については殆ど研究がなされていない。特に、軟骨細胞は発生学的にMSCsに由来することが知られていることから、高純度の軟骨再生を得るためには効果的なMSCs誘導方法が必須である。そこで本研究ではMSCs誘導に焦点を当て、効果的な分化誘導法の開発と運動器再生医療領域における多能性幹細胞の臨床的価値を正確に評価することを目的に、1)ウサギES細胞を用いたモデル研究、2)ヒトiPS細胞を用いた基礎研究を計画した。また、発展研究として3)新規多能性幹細胞ソースの開発を実施した。 計画二年目には、1)ウサギiPS細胞を用いたモデル研究と、2)ヒトiPS細胞からのin vitro、in vivoでのMSCsの分化誘導法の確立を実施した。研究1)について、昨年度ES細胞で確立した系がiPS細胞においても有効であることを確認した。研究2)について、ヒトiPS細胞からもMSCsの誘導が可能であり、誘導MSCsは正常ヒト骨髄由来MSCsと同等のマーカー発現を示すこと、正常ヒト骨髄由来MSCs、in vitro誘導MSCsに比べin vivo誘導MSCsにおいて高いテロメラーゼ活性が認められることが明らかとなった。また、研究3)において、ウサギ卵巣内に残存する未成熟卵胞内卵子を体外で培養、成熟させ、顕微授精を行うことでES細胞を樹立することに成功した。 これらにより得られた研究成果は国内、国際学会、原著論文での発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、今年度にin vitroでの分化誘導の実施を計画していた。計画通り、初年度-2年目でES細胞からのin vitroでのMSCs誘導法を確立し、原著論文として報告した。今年度はこの結果を元にウサギiPS細胞での再現実験、さらにはヒトiPS細胞でも同様の成果が得られることを確認し学会発表を行った。尚、当初計画ではマイクロアレイによる誘導MSCsと正常骨髄由来MSCsとの網羅的比較を予定していたが、本年度は計画を変更し定量RT-PCRによる比較検討を行った。その結果、誘導MSCsは正常骨髄由来MSCsに非常に近い発現パターンを示すことが確認できたことから、予想通りの成果が得られたと考えている。次年度はさらに詳細な遺伝子発現解析と比較、低酸素環境によるMSCs誘導分子メカニズムの詳細な解析、分化能力と安全性について検討したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、平成25年度には多能性幹細胞から誘導したMSCsを軟骨全層欠損モデルウサギに移植することを計画していた。初年度にウサギモデルでの移植と再生への寄与を確認したため、計画時の目標は達成されたと考えている。しかしながら、長期の観察およびヒトiPS細胞を用いた再現と長期観察による安全性の評価が重要な課題である。そのため、平成25年度にはヌードラットをモデル動物としてヒトiPS細胞由来MSCsの移植を行い、経過の観察を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は動物実験が主となる予定である。計画どおり、予算の多くをモデル動物(ヌードラット)の購入および細胞の加工に要する消耗品費として使用する予定である。
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