初年度および次年度にin vivoにおけるMSC誘導法を開発、特許として申請を行った。また、酸素分圧1%の培養環境下で未分化多能性細胞が選択的に死滅することを見いだし、これを利用してin vitroでの誘導法を確立した。研究期間中期からは誘導したpc-MSCsの詳細な解析を実施し、典型的なMSCsの性質、分化能力を有することを明らかにした。また、ウサギpc-MSCsより細胞シートを作成し、ウサギ軟骨全層欠損モデルに移植、1ヶ月後の観察において、豊富な細胞外マトリクスを有する再生軟骨組織により欠損部がほぼ完全に修復されていることを確認した。GFP導入pc-MSCsを用い、pc-MSC由来細胞のみをソーティング、解析したところ、移植細胞は軟骨細胞として定着することが確認された。この結果を受け、研究機関後半にはヒトiPS細胞からのpc-MSCsの誘導を実施した。本研究で開発したin vivo誘導法、in vitro誘導法はともにヒトiPS細胞でも有効であり、典型的なMSCマーカーの発現、分化能力を示すpc-MSCが得られた。両pc-MSCsをSCIDマウス皮下およびNudeラット関節内に移植したところ、in vivo pc-MSC移植群において高頻度のテラトーマ形成を認めた。pc-MSCsを詳細に解析したところ、in vivo誘導MSCsにおいては高テロメラーゼ活性など正常MSC、in vitro pc-MSCにはみられない性質を示すこと、継代培養によりiPS細胞誘導時に使用したウイルスの再活性化が生じうることが明らかとなった。以上より、1) 多能性幹細胞からは移植可能なMSCが得られること、2) iPS細胞を由来とした場合においては、誘導方法によって腫瘍原性などが異なる場合があり、より慎重な検討を要するという研究結果が得られた。
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