研究課題
本研究課題では、遺伝子改変動物を用いて、急性疼痛ストレス負荷時の視床下部におけるバゾプレッシン系の生理的役割を解明することを目的とした。具体的にはc-fos-mRFP1トランスジェニックラットにホルマリンあるいはTRPV4アゴニスト(4α-PDD)を皮下注射することで急性疼痛ストレスを負荷し、脊髄後角ならびにバゾプレッシン産生ニューロンを含む視床下部室傍核(PVN)の賦活化を、mRFP1蛍光を指標にc-fos遺伝子の発現として観察した。また、注射後の後肢の腫脹や生体防御行動も併せて検討した。その結果(1)ホルマリン注射90分後、トランスジェニックラットでは脊髄後角ならびにPVNにおいてmRFP1蛍光が著明に発現していた。(2)ホルマリン注射後、野生型ラットにおける免疫組織化学的染色法によるFosタンパクの発現と比し、脊髄後角ではmRFP1蛍光はFosタンパクより2倍以上多く発現していた。また、脊髄後角およびPVNにおいて、トランスジェニックラットではmRFP1蛍光は注射3時間後をピークに6時間後まで増強していたのに対し、野生型ラットでは注射90分後から3時間後にFosタンパクの発現のピークがあり、6時間後にはほとんど消退していた。(3)生体防御行動はホルマリン注射後、それぞれのラットともに著明に増加したが、4α-PDDおよび生理食塩水注射後は、有意な増加を認めなかった。後肢の腫脹はホルマリン注射後著明であったが、4α-PDD注射後でも中程度認めた。4α-PDD注射後、野生型ラットではFosタンパク、トランスジェニックラットではmRFP1蛍光が脊髄後角およびPVNにおいて有意に増加した。以上の結果から、c-fos-mRFP1トランスジェニックラットは、急性疼痛ストレスに対して鋭敏に反応しており、中枢神経系での侵害受容機構を調べる上で有用な動物モデルであることが明らかとなった。
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Brain Research
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