本研究は高悪性度骨軟部肉腫患者の生検検体や血清を用い、発がんや悪性形質維持に大きな役割を持つとして近年注目されているマイクロRNAの網羅的解析およびその機能解析を行うことによって、予後や治療効果を予測する新たなバイオマーカーを開発することを目的とした。 様々な骨軟部腫瘍生検検体の網羅的マイクロRNA解析を行う中で、特に小児・若年成人に好発する高悪性度骨軟部肉腫であるユーイング肉腫に着目して研究を行った。ユーイング肉腫は特徴的な融合遺伝子EWS-ETS遺伝子群によって発症する円形細胞腫瘍で、既存の化学療法などの集学的治療が一定の効果を示すが、治療そのものによる二次発がんや重要臓器に対する有害事象に悩まれることも多々あり、中には様々な治療に抵抗性のグループも存在する。本研究では、生検検体においてmiR-34aというマイクロRNAの発現が高い症例は予後が良好であり、発現量が著しく低い症例は2年以内にほぼ全例が再発転移を来し、miR-34aがユーイング肉腫の重要な予後予測因子となりうることを明らかにした。 さらにユーイング肉腫患者の初診時血清サンプル中のマイクロRNA解析を行った。その結果、ある特定のマイクロRNAがユーイング肉腫患者で多く発現しているという結果を得た。このマイクロRNAは他のがん腫において、発がんを促進している発がん性マイクロRNAであることが明らかにされつつあり、その発現量を経時的に観察することによって腫瘍マーカーとして開発できる可能性を秘めている。 今後は日本ユーイング肉腫研究グループ(JESS)等と協議し、本研究で得られた知見を、多施設でより大規模な検証実験を行えるよう、計画を進めていく予定である。
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