研究課題/領域番号 |
23791678
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研究機関 | 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター |
研究代表者 |
大藪 淑美 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 研究員 (80587410)
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キーワード | 3次元 / 硬さ / 幹細胞 / 分化 |
研究概要 |
本研究では硬さ制御可能な3次元培養用人工細胞外マトリックスを開発し、幹細胞の軟骨細胞への分化における3次元足場の硬さの影響を明らかにする。近年、細胞分化とその足場の硬さの関係が明らかにされたが、いずれも2次元培養での研究成果である。従来の3次元では硬さを制御できなかったが、コラーゲンと化学的に等価であるゼラチンの融点を高める新技術を開発して3次元包埋培養を実現し、その濃度により硬さを制御する。3次元環境が分化誘導が必須である軟骨組織の再生において3次元の硬さが幹細胞の分化に与える影響を解明する。 1)培養環境で融解しない高融点ゼラチン(未分解型ゼラチン)を合成し、細胞の3次元包埋培養を実現した。当該年度では高融点ゼラチンの安定的な製造方法を検討し、アテロコラーゲンを中性下で熱変性させ、α鎖が未分解型ゼラチンを作製した。未分解型ゼラチンは市販ゼラチンよりも「高融点」「高凝固点」ゼラチンであることを実証し、溶融曲線を比較すると未分解型ゼラチンは市販ゼラチンより高融点成分が多いと推定された。30~32℃でゲル化した未分解型ゼラチンは37℃で融けないことを実証したため、細胞培養に使用できると推定された。 2)1の培養材料の硬さを制御して3次元包埋培養の実験系を構築した。未分解型ゼラチンの培養中の硬さを測定したところ、従来法による0.5%コラーゲン線維ゲルの硬さ73Paに対して、未分解型ゼラチンゲルの硬さは濃度2.5%で131Pa、5.0%で427Pa、8.0%で3970Paとなった。8%未分解型ゼラチンゲル中で間葉系幹細胞を培養したところ、3日間の培養では全く生存率の低下は見られなかった。 3)3次元細胞外マトリックスの硬さの分化への影響を解析した。当該年度では間葉系幹細胞を軟骨細胞に分化培養を試みたところ、2.5%に比べ8%は白濁し、基質産生量が多いことが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3次元マトリックスである高融点ゼラチンの作製にあたり目的を達成するために、当初の予定より作製のステップを増やす必要ができました。従って、24年度に実施する計画3)3次元細胞外マトリックスの硬さの分化への影響の解析が終了することができなかったことが理由です。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、当該年度の解析を詳細に実施する。 3次元細胞外マトリックスの硬さが幹細胞から軟骨細胞への分化に及ぼす影響を明らかにして詳細を検討する。幹細胞から軟骨細胞への分化を最も促進するゼラチンの硬さを見出す。 ①異なる硬さにより分化培養した軟骨細胞の基質産生量を組織学的評価と生化学的評価により定量する。 ②①で確認できない場合には分子生物学的評価を実施して、硬さが分化に影響を与えることを明らかにする。 ③硬さが分化に影響する遺伝子をDNAアレイ解析により特定し、この因子の特定により軟骨分化と足場の硬さに密接な関係があることを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
・DNAマイクロアレイ解析委託費 378000円
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