全身麻酔をペントバルビタールの腹腔投与とセボフルランを併用して行い8分間の心停止実験を行った。心停止中は加温コイルを用いて頭の温度を38.5度に保った。水硫化ナトリウムの投与量を前年度より減らし、0.2mg/kgの経静脈投与とし、心肺蘇生30分後に投与したが、生存率24%と低く、この投与量での実験継続を断念した。生存率を高めるために頭の加温を37.5度と減らし、より生理的な条件に近づけた。水硫化ナトリウムの投与経路を変更し3mg/kgの腹腔投与を心肺蘇生30分後に行った。この条件で生存率60%以上となったため、本実験を開始した。 【方法】マウス(オス、体重20-28g、C57bl/6)にセボフルラン2%とペントバルビタール25mg/kg腹腔投与し全身麻酔後、中心静脈からカリウムを注入し心停止を誘発し、心停止時間8分後から蘇生を開始(純酸素で人工呼吸、エピネフリンを投与、心臓マッサージ)。蘇生30分後にNaHSを3mg/kg腹腔投与し、生理食塩水投与(NS)群と比較した。蘇生後の体温は、保温器具により6時間、両群とも35℃以上に保った。蘇生4日後に灌流固定を行い、脳組織をH&E染色し、海馬と線条体の障害を評価した。 【結果】 蘇生4日後の生存率はNaHS投与群(n=20)が70%とNS投与群(n=19)の74%と同程度であった。線条体の組織障害はNaHs群で有意に少なく(NaHS群vs NS群: 22±7% vs 35±22%、P<0.05)、海馬の組織障害は両群で有意差は無かった (NaHS群vs NS群: 17±23% vs 25±31%)。4日後の神経行動反応スコアも両群で有意差なかった。 【結論】 蘇生後の体温を一定に保った場合においても、NaHSの蘇生後投与は脳の線条体における組織障害を軽減した。海馬の遅発性神経細胞死は4日間では観察できなかった可能性がある。
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