水チャネルであるAQP1は浮腫形成と痛みの両方に関与している。浮腫や痛みは慢性疼痛症候群の一つであるCRPSの特徴である。本研究は、AQP1がCRPSのメカニズムに関与しているかどうかを調べるために行われた。野生型マウスに虚血後慢性疼痛(CPIP)モデルを与え、浮腫および痛覚過敏の発生におけるAQP1の役割を調べた。そのために、AQP1機能の阻害剤であるアセタゾラミド(AZA)を用いた薬理学的アプローチを用いた。AZA群のマウスでは、CPIP作成日の前日から、28日間の観察期間に渡って毎日AZAの投与を行った。しかし、AZAの投与は浮腫の程度やその減り具合に影響を及ぼさなかった。また、28日の観察期間中に行われた機械的および熱刺激による感覚アッセイにおいてもAQP1阻害剤投与による痛みの改善効果も見られなかった。この結果から、AQPは虚血再灌流傷害後の浮腫形成および痛覚過敏症の発症に関与している可能性は低いことが示唆された。また、CRPSの薬理学的管理のためにAQP1以外のターゲットを探るべきことも示唆された。
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