研究課題/領域番号 |
23791694
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
布施谷 仁志 信州大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (00588197)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | 骨がん疼痛 |
研究概要 |
本研究の目的は、QX-314の骨がん疼痛に対する鎮痛効果とその機序解明である。「骨がん疼痛に対するQX-314の鎮痛効果」骨がん疼痛モデルマウスを作製し、QX-314投与前後で疼痛関連行動が改善するか調べた。QX-314単回腹腔内投与は、自発痛関連行動を用量依存性に抑制した。しかし、動作時疼痛関連行動を抑制しなかった。QX-314持続皮下投与においても、自発痛関連行動のみを選択的に抑制した。QX-314の血中濃度は、3 mg/kg単回腹腔内投与および5 mg/kg/h持続皮下投与いずれも0.5 μg/mL程度と同様な濃度を示した。「QX-314の鎮痛効果機序」これまでの研究で、QX-314が活性化されたTRPV1を介して細胞内に流入し、局所麻酔作用を発揮することが報告されている。そこで、QX-314の鎮痛効果とTRPV1の関連について検討した。はじめに、末梢神経の活性化によってCREBがリン化されることに注目し、p-CREB発現に対するQX-314の効果を調べた。QX-314持続皮下投与によりTRPV1陽性神経におけるp-CREB発現は50%から21%へと有意に減少したのに対し、TRPV1陰性神経におけるp-CREB発現は変化しなかった。この結果から、QX-314の骨がん疼痛に対する鎮痛効果は、TRPV1陽性神経の活動を抑制した結果もたらされたものであると示唆された。また、カプサイシンくも膜下投与によるTRPV1陽性神経脱落は、自発痛関連行動を抑制したが、動作時疼痛関連行動は抑制しなかった。したがって、QX-314はTRPV1陽性神経に作用し、鎮痛効果を発揮していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初平成23年度中の実施を計画していた、疼痛関連行動の観察によるQX-314の鎮痛効果に関する研究が順調に進められたため、その鎮痛効果の機序に関する検討にも着手し、成果が得られている。しかしながら、現段階では計画書の研究課題の半分を達成したにすぎない。QX-314の骨がん疼痛関連電位に及ぼす影響の検討や、QX-314の副作用・安全性に関する検討などは達成できておらず、今後も更なる研究を計画通りに進めていく必要がある。
|
今後の研究の推進方策 |
「骨がん疼痛の電気生理学的検討」骨がん疼痛状態において脊髄に伝えられる一次求心性線維の興奮の特徴は未だわかっていない。活動電位がどのような性質をもつのかを脊髄細胞外記録を用いて測定する。同時に、QX-314をくも膜下投与することによって活動電位の発火頻度が減少するかどうか検討する。「副作用の検討」今回用いたQX-314の投与量では、痙攣や呼吸抑制といった重篤な中枢神経毒性はみとめなかった。しかし、心電図には何らかの不整脈が発生し、心毒性を有する可能性は否定できない。そこで、軽い鎮静下にQX-314を投与し、心電図上不整脈や房室ブロックなどの変化が起きないかどうか検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は当初計画で見込んだ動物・試薬の購入額よりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。骨がん疼痛の電気生理学的検討のために、骨がんモデルマウス作製のための動物購入、QX-314やTRPV1 antagonistなどの試薬、電気生理実験に必要な電極・動物固定器具・消耗品購入費として支出が見込まれる。また、副作用に関する検討のために動物購入費、手術道具購入費、脳波や心電図の記録装置購入に支出が見込まれる。
|