本研究の目的は、4級アミン局所麻酔薬QX-314の骨がん痛に対する鎮痛効果とその機序解明である。 「骨がん痛に対するQX-314の鎮痛効果」 骨がん痛モデルマウスを作製し、QX-314投与前後で痛み関連行動が改善するか調べた。QX-314単回全身投与は、自発痛関連行動を用量依存性に抑制した。しかし、動作時痛関連行動を抑制しなかった。QX-314持続全身投与においても、自発痛関連行動を選択的に抑制した。QX-314の血中濃度は、3 mg/kg単回投与および5 mg/kg/h持続投与いずれも0.5 μg/mL程度であった。また、持続投与24時間後と48時間後の血中濃度に差はなく、蓄積しなかった。 「QX-314の鎮痛効果機序」 これまでの研究で、QX-314が活性化されたTRPV1を介して細胞内に流入し、局所麻酔作用を発揮することが報告されている。そこで、QX-314の鎮痛効果とTRPV1の関連について検討した。はじめに、侵害刺激を受容して末梢神経が活性化すると、CREBがリン酸化されることに注目し、骨がん痛モデルマウスで、1次知覚神経のp-CREB発現に対するQX-314の効果を調べた。QX-314持続投与によりTRPV1陽性神経におけるp-CREB発現は53%から32%へと有意に減少したのに対し、TRPV1陰性神経におけるp-CREB発現は変化しなかった。この結果から、QX-314の鎮痛効果は、TRPV1陽性神経を選択的に抑制することで発現することが示唆された。また、カプサイシンくも膜下投与によるTRPV1陽性神経脱落は、動作時痛ではなく、自発痛関連行動を完全に抑制した。この結果から、骨がん痛においては、TRPV1陽性神経が自発痛を選択的に伝達していることが明らかとなった。以上より、QX-314はTRPV1陽性神経を選択的に抑制して、自発痛を減弱させることが明らかとなった。
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