研究概要 |
カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、痛みの伝達・修飾物質として重要であるが、その痛みの機序は不明である。本研究では、独自に作製されたノックアウトマウスを用いて、Transient receptor potential cation channel, subfamily V, member 1 (TRPV1) とCGRPファミリーであるCGRPやアドレノメデュリンとが痛みに関与しているメカニズムを明らかにして、カルシトニン受容体様受容体(CLR)と受容体活性調節タンパク(RAMP)をターゲットとした新たな鎮痛法の開発を目指している。 本年度は、αCGRP遺伝子欠損マウスとCGRP受容体拮抗薬であるCGRP8-37を用いて、術後痛モデルおよび炎症性疼痛モデルを作製しその検討を行った。後肢足底皮膚を切開した術後痛モデルと炎症性疼痛モデルでの疼痛行動解析により、CGRPの関与が異なることが示された。すなわち、αCGRPは術後痛モデルでの自発痛・熱性痛覚過敏・機械性痛覚過敏には関与しなかったが、炎症性疼痛モデルでは、自発痛・熱性痛覚過敏に脊髄レベルで関与していた。CGRPはC線維から特異的に放出され、CGRP含有線維はTRPV1受容体を共発現しており、TRPV1活性化とCGRPとが関連している可能性が示唆された。
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