敗血症患者の予後改善には、腸管粘膜血流などを代表とする微小循環の維持が重要であると言われている。近年、敗血症モデルにおいて舌下粘膜血流が腸管粘膜血流と相関があることが報告され、舌下粘膜血流が腸管粘膜血流の代用モニタリングとなりうる可能性が示唆されている。本研究では、当初ブタ敗血症モデルにおいて舌下および腸管粘膜血流の連動性を明らかにし舌下粘膜血流測定が代用モニタリングとして適切であるかについて検証する予定であった。しかし、粘膜血流を測定するために購入を予定したMicroScan System Package(MicroScan社)が入手困難となったため、研究実施計画を変更せざるを得なくなったため、ヒト敗血症性ショック患者における小腸粘膜障害の指標とした腸型脂肪酸結合蛋白(I-FABP)を測定し、予後やI-FABP値に関連する因子の解明、消化管合併症や舌の虚血性変化の調査を行った。 結果としては、約半数の症例でICU入室時にI-FABPが上昇しており、高率に小腸粘膜障害を合併していることが示された。I-FABP高値群では、有意にAPACHE II score、ICU入室時の乳酸値、NT-pro BNPが高く、蘇生開始から24時間の輸液バランスが高値であった。I-FABP高値群では、腹部緊満や腸管虚血・壊死を疑われた症例が有意に多かった。ICU入室時のI-FABP高値が、消化管合併症発症の予測因子となる可能性がある。 I-FABP高値群では、ICU入室時に舌のチアノーゼを呈する症例が有意に多く、舌血流と腸管粘膜血流に関連がある可能性がある。 ICU入室時のI-FABP値は、有意差はなかったもののI-FABP高値群で高い死亡率を示す傾向にあり、予後予測因子としての可能性に期待できる。今後、さらに症例を集積し予後予測因子となり得るか明らかにする予定である。
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