研究課題/領域番号 |
23791714
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西岡 健治 長崎大学, 大学病院, 助教 (70380904)
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キーワード | 気道平滑筋のリモデリング / 麻酔薬 |
研究概要 |
Ovalbumin 10μg とアジュバントを腹腔内投与して感作したラットでは、抗原であるOvalbuminを投与することで、即時型アレルギー反応により、気管平滑筋の収縮を誘発できる。これまでの研究で、各種麻酔薬はこの収縮を抑制した。そこで、より喘息患者に近いモデルで検討するため、初回感作から2週間後から、更に2週間の間Ovalbumin を鼻腔内に隔日で投与し、追加感作を行った。当初の計画どおり摘出気管の等尺性収縮の変化で検討したところ、追加感作したラットの気管では、薬物や電気刺激によって収縮力の最大値の上昇は認めるものの、EC 50は変化しなかった。このため、等尺性収縮で検討した場合、麻酔薬の影響をとらえることが難しいと考えられた。そこで、追加感作の影響として、まずは病理組織学的検討をおこなった。1週間の追加感作(鼻腔内投与)によって、これまで喘息患者の気道平滑筋のリモデリングとして報告されている炎症性変化に加えて、上皮における杯細胞の増加が認められたが、明らかな平滑筋の肥厚は認めず、3週間の追加感作によって、はじめて平滑筋の肥厚も観察された。本研究は慢性喘息患者の気道平滑筋に対する麻酔薬の影響を研究することを目的としていたが、平滑筋の肥厚が比較的短期間で起こることが明らかとなったため、まずはこの気道平滑筋のリモデリングに対する麻酔薬の影響を調べた。重症喘息の治療に用いられることもあるセボフルランを追加感作の際に吸入させ、病理組織学的検討を行ったところ、セボフルランはこの形態的変化をある程度抑制していたが、機能的変化(収縮力や気道抵抗の変化)はわずかで、有意差はなかった。現在セボフルランの濃度を上げて、検討中である。当初の計画からすると少し遠回りになるが、周術期の喘息患者の安全な管理を確立するという当初の目的の達成のために必要であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初予定していた追加感作方法では、収縮実験で収縮力の最大値の上昇は認めるものの、EC 50は変化しなかった。このため、当初の計画通り収縮実験を中心に検討した場合、麻酔薬の影響をとらえることが難しいと考え、病理組織学的検討をおこない、平滑筋の肥厚をはじめとする形態変化、いわゆるリモデリングが確認できた。この結果を基に、平成24年度は、追加感作時からセボフルランなどの薬剤を投与して、このリモデリングに及ぼす影響を検討してきた。形態変化に対する抑制効果などはある程度確認できたものの、収縮力や、気道抵抗に関しては有意な影響はなかった。このため、平滑筋の肥厚に主眼を置いて、病理学的検討をおこなったところ、当初計画した感作期間ではリモデリングの程度にばらつきがあり、感作期間の延長などが必要となり、実験が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の実験結果を基に追加感作期間を3週間に設定し、セボフルランのリモデリング抑制効果を、病理組織学並びに摘出気管の収縮力の変化を中心に検討しているのでこれを継続する。各種サイトカイン、組織増殖因子(TGF-α)などの測定も併せて行うことで、機序も解明し、最終的な結果をまとめて発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ラットや薬剤などの消耗品の購入、サイトカインや組織増殖因子の定量測定にかかる費用、発表のための旅費などに当てる予定である。
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