Ovalbumin 10μg とアジュバントを腹腔内投与して感作したラットでは、抗原であるOvalbuminを投与することで、即時型アレルギー反応により、気管平滑筋の収縮を誘発できる。これまでの研究で、各種麻酔薬はこの収縮を抑制した。そこで、より喘息患者に近いモデルで検討するため、初回感作から2週間後から、更に2週間の間Ovalbuminを鼻腔内に隔日で投与し、追加感作を行った。 当初の計画どおり摘出気管の等尺性収縮の変化で検討したところ、追加感作したラットの気管では、薬物や電気刺激によって収縮力の最大値の上昇は認めるものの、EC 50は変化しなかった。このため、等尺性収縮で検討した場合、麻酔薬の影響をとらえることが難しいと考えられた。 そこで、実験の方法を当初の計画から変更し、気道収縮に対する迷走神経の影響を電気刺激により検討し、摘出気管における迷走神経末端の残存とその収縮実験への影響を明らかにした。 これに平行して、追加感作の影響として、病理組織学的検討をおこなった。2週間の追加感作(鼻腔内投与)によって、これまで喘息患者の気道平滑筋のリモデリングとして報告されている炎症性変化に加えて、上皮における杯細胞の増加が認められたが、平滑筋の肥厚は認めず、3週間の追加感作によって、はじめて平滑筋の肥厚も観察された。さらに、重症喘息の治療に用いられることもあるセボフルランを追加感作の際に吸入させ、病理組織学的検討を行ったところ、セボフルランはこの形態的変化をある程度抑制していた。しかし、機能的変化(収縮力や気道抵抗の変化)の抑制はわずかで、有意差はなかった。
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