研究課題
アルツハイマー型認知症患者に対する全身麻酔薬の安全性は確立されていない。アルツハイマー型認知症の発症機序としては、アミロイドβ(Aβ)の蓄積とタウ蛋白質の以上リン酸化が知られている。これまでの研究結果では、プロポフォールとチオペンタールは、Aβ凝集を促進するGM1ガングリオシドの発現を低下させることにより、Aβ凝集を抑制することを確定することができた。また、ケタミンはアストロサイトにおけるAβ分解酵素であるネプリライシンの発現を抑制することを明らかにした。この結果を再度確認したことにより、ケタミンはAβの分解を抑制することにより、Aβの凝集を促進する可能性が明らかとなった。アルツハイマー型認知症モデルマウスの作成は、SP2マウスとTg2576マウスを交配することにより作成した。2か月後に解剖し、脳における老人斑様の構造の出現を確認することができた。また、GM1ガングリオシドの発現が増強することも確認できた。さらには、行動学的実験により記銘力低下を確認することができた。現在、プロポフォールとチオペンタール麻酔からの回復後における、GM1の発現の変化や行動学的変化を検討している。プロポフォールとチオペンタール麻酔によりGM1の発現が低下することは確認できたが、行動学的な変化に与える影響は明確ではない。今後、プロポフォールとチオペンタールの投与量や投与間隔を変化させ、アルツハイマー型認知症患者の脳により影響の少ない麻酔薬や麻酔方法を確立する予定である。
すべて 2013
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Biochem Biophys Res Commun
巻: 442 ページ: 16-21
10.1016/j.bbrc.2013.10.126.