開腹手術後の腹腔内癒着形成には、外科的侵襲による線溶系の抑制が関与しておりアンギオテンシンIIが線溶系を抑制するという知見がある。我々はアンギオテンシンII受容体拮抗薬(AT1受容体)であるカルデサルタンの腹腔内投与を行うとプラスミノゲンアクチベーターインヒビタ--1(PAI-1)の発現を減少させ癒着を抑制することを明らかにした。2型糖尿病モデルラットとしてOLETFラットその対照の非糖尿病ラットとしてLETOラットを糖尿病発症まで25週間育成し、経口糖負荷試験により糖尿病の発症、非発症を確認した。ラット腹腔内癒着モデルを用いて、OLETF、LETOラットにおいて、カンデサルタンの投与量、投与回数を変更し、至適投与量、投与方法を検討し、カンデサルタン腹腔内投与の条件を以下のように決定した。それぞれのラットをハロタンで麻酔し、腹部正中切開を加え、開腹した。腹腔内より回腸を腹腔外に取り出し、圧縮空気にて乾燥させ、腹腔内に戻した。ラット血液2mlを腹腔内に注入し、カンデサルタン投与群には0.3mgのカンデサルタン溶液を腹腔内に投与し、カンデサルタン非投与群には、同量の生理食塩水を腹腔内投与した。 手術12時間後にハロタン麻酔下で、再びラットを開腹し、腹腔内脂肪組織を調製した。最後に 脂肪組織よりPAI-1 mRNAを調製し、real time RT-PCRにより定量を行った。カンデサルタン投与量を0.15mg、0.3mg、0.6mgとし、腹腔内投与1回のみのもの、1日毎、2日毎に腹腔内投与したものという群にわけて、それぞれの癒着スコア、およびPAI-1 mRNA発現量を定量した。また飼育中の血圧の変化を尾動脈より測定した。
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