免疫細胞による末梢神経炎症は神経障害性疼痛の形成因子であり、T細胞は炎症反応において重要な働きを担う。神経障害性疼痛における免疫細胞間クロストークの機能を明らかにするため、マクロファージ-T細胞間の共刺激分子に着目し、以下の実験を行った。神経障害性疼痛モデルとして坐骨神経部分結紮(PSL)モデルを作製した。PSLおよびsham処置7日後の坐骨神経を採取し、マイクロアレイ解析を行った。23475個の遺伝子発現変化を網羅的に解析した結果、PSLにより共刺激分子であるGITRLおよびGITR を含む12553遺伝子が発現増加していた。また、CD11b、CD4、CCL3、IL-1beta発現も2倍以上増加していた。リアルタイムPCRにより、PSL後の坐骨神経においてGITRLおよびGITR、Iba-1・CD14(マクロファージマーカー)、CD25(活性化T細胞マーカー)のmRNA発現増加が観察された。前年度の組織化学的解析により、GITRLおよびGITRがPSL後の坐骨神経に集積するマクロファージおよびT細胞に局在することを明らかにしている。緑色蛍光タンパク質(EGFP)トランスジェニックマウスの骨髄を移植したEGFPキメラマウスを用いてPSL後の坐骨神経における免疫細胞の挙動を検討した。PSL後の坐骨神経周囲に多数のEGFP陽性細胞が観察され、また抗GITRL抗体との二重免疫染色によりEGFPとGITRLは共局在していた。さらに、マクロファージの枯渇薬であるクロドロネートおよびT細胞の枯渇薬であるFTY720によりPSL誘発性の熱痛覚過敏および触アロディニアが軽減された。まとめると、神経周囲の血管より傷害神経に集積するマクロファージ・T細胞は共刺激分子を有することが明らかとなり、共刺激分子による免疫細胞活性制御が慢性疼痛制御に重要である可能性が示唆された。
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