研究課題
本年度は特に、オピオイドを含む G-タンパク共役型受容体 (GPCR) を介した抗腫瘍効果ならびにそのメカニズムについて検討を行う目的でゲフィチニブの漸増処置により、ゲフィチニブ耐性ヒト非小細胞肺がん細胞株を自身で樹立し、オピオイド受容体を含む G-タンパク共役型受容体 (GPCR) の網羅的発現解析を行った。ゲフィチニブ耐性ヒト非小細胞肺がん細胞株 (HCC827GR) は、ゲフィチニブ感受性株 (HCC827) 細胞に、ゲフィチニブを1.5 ヶ月間漸増処置することにより、樹立を行った。HCC827GR は、H1975 と同様に、ゲフィチニブ耐性の主因であるEGFR のT790M の点突然変異や、p53のDNA 結合を抑制する R273H も認められた。さらに、HCC827GR 細胞では上皮間葉形質転換も認められた。ゲフィチニブ感受性株である HCC827 細胞、ゲフィチニブ耐性株である H1975 細胞ならびに HCC827GR 細胞を用いて、Taqman アレイに従い 384 種類の GPCR の網羅的発現解析を行ったところ、多数のGPCR の発現変動が認められ、なかでもゲフィチニブ耐性株において、著明なアデノシンA2a 受容体の発現増加が認められた。また、HCC827 ならびに H1975 におけるアデノシンA2a 受容体阻害薬ならびにノックダウンを行うことにより、ゲフィチニブ耐性非小細胞肺がん細胞の有意な増殖抑制が認められた。以上の結果より、既存のEGFR 阻害薬に対して、耐性を獲得した非小細胞肺がんにおいても、GPCR を介するシグナルを調節することにより、がん細胞増殖を抑制できる可能性が示唆された。特に、アデノシンA2a 受容体の阻害は、抗腫瘍効果が期待できる新たなターゲットとなり得る可能性が考えられる。こうした一連の結果は、PLOS ONE に受理された。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
PLoS One.
巻: 7 ページ: e44368
Br J Cancer.
巻: 106 ページ: 1148-52