研究課題/領域番号 |
23791733
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
増井 健一 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 病院, 講師 (20303430)
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キーワード | 術中覚醒 |
研究概要 |
平成24年度はプロポフォールによる麻酔開始時の短時間(麻酔導入時)の濃度を検証するデータの収集を開始した。このデータは平成24年度中に収集は途中であるが、一部のデータを解析した。その結果、Target-controlled infusionを用いてプロポフォールを投与した場合、投与初期の(薬物動態モデルにより計算された)予測濃度の変化が実際の濃度と大きく異なる可能性が高いことが示唆された。 全身麻酔にプロポフォールを使用することは術中覚醒の危険が高いことは、我々もふくめ過去に複数の報告によりわかっている。これは、プロポフォールは効果の個人差が大きいためと考えられる。したがって、全身麻酔にプロポフォールを使用する場合、その効果の個人差を捉えることは極めて重要である。個人差を捉える目的で、臨床では麻酔導入時にプロポフォールを投与開始し、患者の反応がなくなった時点(就眠時)の予測濃度を参考に麻酔維持を行うという方法がとられることがしばしばある。しかし、この方法は時として術中覚醒の危険を生じる。実際にこの方法により術中覚醒をしたという症例報告も過去に存在する。 我々の研究によれば、麻酔導入時の実測プロポフォール濃度は予測プロポフォール濃度よりも数倍高くなりうる。したがって、就眠時の予測濃度のみで効果の個人差を評価することは危険であるといえる。 結果の一部については、平成24年度に開催された麻酔薬理の国際学会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロポフォールの濃度を測定して行う研究に関しては、データの収集が遅れている。必要なソフトウェアの開発を海外のソフトウェア開発会社に依頼したが、その会社の開発が当初の予定より大幅に遅れたことによる影響である。 研究テーマ「術中覚醒を減少させるための麻酔関連薬剤の薬物動態力学研究」の研究と一部として、プロポフォール単剤の研究と並行して、全身麻酔薬と麻薬の相互作用についての研究を平成24年度に開始し、現在、データの収集をほぼ終えて、データの精度の確認を行っている。解析をはじめる直前の段階であり、こちらの研究は順調に進んでいる。 したがって、研究の達成度は全体としてはやや遅れているという状態と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
プロポフォール単剤の研究は前向き臨床研究であるため、同意が頂けた患者さんからのデータの収集を継続し、収集が終わり次第、データの解析、薬物動態力学モデリング、および結果の発表を行っていく。全身麻酔薬と麻薬の相互作用についての研究は、データの質的検討が終わり次第、解析をすすめ結果の発表を行う。後者は年度の前半に論文として投稿し、また国際学会の演題として投稿する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬物動態力学モデリングのために解析用コンピュータを数台、薬物動態解析プログラムの年間ライセンス、薬剤濃度の測定に必要となる薬剤、消耗品、機器等の購入を予定している。また、学会にて成果を発表する予定であるため、演題が採用された学会への出張費としても研究費を使用予定である。
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