超高齢化社会である我が国は排尿障害患者の罹患率が増加しており、我々は排尿メカニズムの解明に関する検討を行っている。排尿障害の原因として注目しているのは、近年のヒトの脳機能画像から排尿をはじめとする多くの生理活動における重要性が指摘されている“前部帯状回”である。前部帯状回は解剖学的に橋排尿中枢という最終的に排尿を決定する部位へ神経線維を送る上位に位置しており排尿反射における重要な役割を果たしている。 我々は主に2つのアプローチをラットに対して行っている。1つ目は電気生理学的アプローチであるが、前部帯状回は(頻尿状態に対する)防御的機構として働いている可能性が高いことが確認された。すなわち電気的な刺激によって排尿障害時に前部帯状回の活動を刺激によってサポートすることで、排尿障害が改善することを確認した。直接的な介入はヒトにおいて未だ困難であるが、今後は中動物への適応を行い将来的には外来的にヒトに対する前部帯状回の刺激療法を目指している。 2つ目は、薬理学的アプローチである。我々のグループで確立したラットにおける覚醒下での前部帯状回における神経伝達物質の測定を施行中であるが、少なくとも神経伝達物質の種類(グルタミン酸、セロトニン、ドーパミン)によってはその動態が異ることを示唆する結果を得ている。これは先の前部帯状回の詳細な電気生理学的検討にて、ほぼ2カ所が病的な排尿に関与していることを突き止めている。しかしながら、ラットは覚醒下による検討であるため行動学的に異常な際に相反する神経伝達物質の動きを得ることもあり未だ結論には達していない。今後さらなる検討によってこの変化を突き止め、さらには排尿障害時における変化を正常に戻すような薬理学的治療の確立を目指している。本結果の発展は創薬への糸口となりうると信じている。
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