研究実績の概要 |
血液型不適合移植では、ドナー臓器の血液型抗原とレシピエント血中の抗血液型抗体との抗体抗原反応を抑制するため、通常の腎移植よりも強力な免疫抑制により顕在化する感染症および移植後の長期成績の低下が問題となる。 平成23,24年度は、ファージディスプレイ法によりA/B抗原標的ペプチド(BATP)を同定した。BATPは、細胞毒性が低く、赤血球、腎組織上のA/B抗原をブロックした。これらの成果を第99回日本泌尿器科学会、臨床腎移植学会誌に発表した。さらにBATPを腎に灌流後、血液型不適合血液を灌流した腎臓では、糸球体毛細血管における抗血液型抗体を含むイムノグロブリンの沈着を抑制し、血栓形成予防効果を示すことを明らかにした。これらの成果を第28回欧州泌尿器科学会およびTransplantation 95, 418-425 2013に発表した。平成25年度は、平成23,24年度の成果を第12回国際異種移植学会に発表した。 平成25,26年度は、血流下における腎血管内皮細胞へのBATPのマスク効果の検討、移植腎血管内皮上の血液型糖鎖抗原提示分子の同定および提示分子結合ペプチドの同定を試みたが、遺伝子導入によりAおよびB型抗原を発現するヒト初代培養腎血管内皮細胞を樹立することが困難であり、当初の計画である腎血管内皮上の血液型糖鎖抗原提示分子を同定することはできなかった。平成25年度以降の研究計画が達成できない場合の方策として血液中の抗血液型抗体を除去するペプチドをファージディスプレイ法にてスクリーニングし、抗Aおよび抗B抗体に結合するファージの増殖に成功した。現在増殖したファージが提示するペプチド配列調べている。BATPによる血液型抗原のマスクと抗血液型抗体結合ペプチドによる血液中からの抗血液型抗体除去を組み合わせることにより、今後、免疫抑制剤減量を目的としたABO不適合移植の新規拒絶抑制法の開発を目指す。
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