研究課題/領域番号 |
23791744
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田所 学 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (00456237)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / 癌幹細胞 / シスプラチン / 治療耐性 |
研究概要 |
膀胱癌幹細胞の分離・同定,シスプラチン抵抗性の検証,治療耐性関連分子発現プロファイルの解析,およびその結果に基づくシスプラチン抵抗性克服の可能性の検討を行った。膀胱癌細胞株から,細胞表面マーカー発現により,癌幹細胞の定義とされる「自己複製能」,「多分化能」,「腫瘍再現能」を兼ね備える細胞集団を超高速Cell Sorterを用いて分離した.具体的にはspheroid colony assayによる浮遊細胞塊形成能,SCIDマウス腫瘍皮下移植モデルを用いたlimiting dilution assayによる腫瘍形成能で評価した.また,シスプラチンに対する治療抵抗性を検証し,膀胱癌幹細胞の治療耐性関連分子発現プロファイルに基づき,heat shock protein 90 (HSP90) 阻害剤による膀胱癌幹細胞のシスプラチン抵抗性克服の可能性を検討した.今研究において、現時点で以下の知見を得た.1,CD44+膀胱癌細胞が,CD44―膀胱癌細胞に比べ,sphere形成能および腫瘍形成能が高い(10~100倍),癌幹細胞の要件を満たす細胞集団であることを確認した.2,膀胱癌幹細胞はCD44―細胞の約2倍のシスプラチン抵抗性を示した.3,膀胱癌幹細胞は高いAktおよびERK活性を示した.4,非殺細胞濃度のHSP90阻害剤は,膀胱癌幹細胞のAktおよびERK活性を同時に不活化させ,シスプラチンによるアポトーシス誘導を増強することによりその殺細胞効果を相乗的に高めた.膀胱癌幹細胞はシスプラチン抵抗性を示し,低濃度HSP90阻害剤を用いることで,シスプラチン耐性克服の可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で、膀胱癌幹細胞の分離・同定および、その治療抵抗性の確認、治療耐性メカニズムの検討を行った上で、細胞レベルでの治療耐性克服の可能性を見い出した。そのため、現時点での進捗状況は順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、治療耐性メカニズムの更なる検討、および、マウスへの腫瘍移植モデルにて膀胱癌幹細胞の治療耐性克服の可能性を検討し、より実臨床に即した検討を行う予定である。同時に、現在までで得られた知見を日本国内および全世界へ向けて発信することに務める予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本泌尿器科学会、欧州泌尿器科学会、米国泌尿器科学会にて本研究の成果を発表することが内定しており、得られた知見を世界へ発信する予定である。また、治療耐性メカニズムに関して更なる考察を行い、臨床に即した新規治療法を確立することに務める。
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