本年度は陰茎癌とHPV感染との関連性および、現在注目されている咽頭癌とHPV感染との関連性をうけて、STD外来を受診した日本人男性患者を対象に咽頭HPV感染の現状についての疫学調査を実施した。 まず陰茎癌17例を対象に、パラフィン包埋切片よりDNAを採取しPCR法にてHPV-DNAの検出を行い、HPV陽性症例についてはHPV型判定を行ったところ、17例中8例(47%)でHPV-DNAが検出され、すべて高リスク型HPV感染であった。HE染色の標本を詳細に検討すると正常亀頭粘膜、PIN(Penile Intraneoplasia)、癌が混在している症例は3例存在した。ISHでは、HPV陽性例において癌組織内に高リスク型HPV-DNAの存在を確認した。IHCではHPV陽性検体の6/8例(75%)でp16-INK4およびmcm-7の発現を認め、PINでは基底層中心に、癌ではび漫性に発現していた。PINと陰茎癌のIHCの染色パターンは女性の子宮頚部異型性(CIN)と子宮頚癌と類似しており、HPV陽性の陰茎癌は、PINを経て癌化するのではないかと考えられた。また、これらの蛋白はHPV陰性例では発現は弱く、IHCスコアはHPV陽性癌検体の方が有意に高く、陰茎癌の約半数はHPV感染が関連していることを分子細胞学的に証明した。 また、男性の咽頭HPV感染の疫学調査では、230例の男性において、咽頭うがい液を用いて調査したところ、18.8%に咽頭HPV感染を認め、過半数は高リスク型であるHPV16の感染であった。咽頭癌から検出されるHPVのほとんどは16型であり、これらの結果を今回の結果は一致していることが分かった。
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