研究概要 |
本年度は、前立腺肥大症治療薬ナフトピジルによる細胞増殖抑制の程度が異なる①市販の正常ヒト前立腺ストローマ細胞PrSC(Lonza社)と②ヒト前立腺腫瘍から初代培養して得られた癌間質細胞PCaSC-8を用いて、ナフトピジルによる細胞増殖抑制に関わる細胞内シグナル伝達経路の同定を試みた。 【検討1】文科省科研費・新学術領域・がん支援・化学療法基盤支援活動班より無償で分与された、320種類以上の化合物を含む標準阻害剤キットを用いてナフトピジルと同じ細胞増殖抑制パターンを示す化合物を探索した。その結果、GSK-3に対する阻害剤(GSK-3 inhibitor II, IXやAlsterpaullone)とCDKに対する阻害剤(Cdk1/2 inhibitor IIIやAlsterpaullone)がナフトピジルに近似した作用を示すことを見出した。 【検討2】ウェスタンブロッティング法により、ナフトピジル処理によるGSK-3のリン酸化阻害とCDK2タンパク質量の低下を確認した。 320種類以上の化合物を含む標準阻害剤キットを用いた網羅的な解析により、ナフトピジルによる細胞増殖抑制に関わる細胞内シグナル伝達経路をGSK-3, CDK2経路と絞り込むことに成功した。現在のところ、臨床で用いられているGSK-3阻害剤はない。よって、GSK-3阻害作用を有する既存薬ナフトピジルを有効活用して、GSK-3シグナルが強く関わるアルツハイマー病など他の疾患治療薬として再開発していく可能性が示唆された。
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