研究課題/領域番号 |
23791754
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 貴博 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40601597)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 尿意センサー / 膀胱上皮細胞 / カルシウムイオンチャネル / 酸感受性 |
研究概要 |
排尿行動は、まず膀胱内の尿貯留を知覚することから始まる。すなわち、尿意である。尿貯留に伴って、膀胱の壁が伸展すると、膀胱上皮に存在する機械/化学受容器(尿意センサー)が活性化し、末梢神経にシグナルを伝えることで尿意が起こると考えられている。既知の尿意センサーには、1.カルシウムイオンチャネルであり、2.酸感受性がある、という共通点があるが、我々はこれらのチャネル全てを抑制した状態で膀胱上皮細胞に酸刺激を与えてみたところ、pH<5の酸刺激で細胞内のカルシウム濃度が上昇し、この現象はカルシウムイオンチャネルを介した細胞外からのカルシウム流入によることが分かった。こうした結果は既知の尿意センサーと特徴が酷似した、未だ同定されていない新規尿意センサーの存在を示唆するものである。これらの背景から、本研究は新規尿意センサー遺伝子のクローニングを第一の目標とし、研究を開始した。発現クローニングに先立って、まず膀胱上皮細胞における酸応答機構の詳細な検討を行ったので、以下に報告する。1.既知の酸感受性のイオンチャネルであるASICファミリーの膀胱上皮細胞における発現を分子生物学的、組織学的手法を用いて検証したが、どのチャネルの発現も認められなかった。2.膀胱上皮細胞で観察される酸応答は、他組織においても同じように見られるのかを食道上皮細胞を用いて観察したところ、食道上皮細胞ではpH<3の酸刺激で細胞内カルシウムストアを介したカルシウムシグナルが認められ、膀胱上皮細胞の応答機構は組織特異的なものである可能性が示唆された。以上の結果を踏まえながら、現在研究計画書に沿って発現クローニングを進めている最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸感受性のカルシウムイオンチャネルを発現クローニングを用いて同定することが目標だが、カルシウムイメージングで用いる蛍光試薬のいくつかは、それ自体が酸の影響を受けることがわかったため、複数の蛍光試薬を用意して、実験条件を確定することに時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
他組織の酸刺激に対する応答様式とは異なり、膀胱上皮細胞における酸応答はカルシウムイオンチャネルを介した特異的な様式であることがこれまでに分かった。今後も研究計画書通り、発現クローニングを進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため、当初の見込額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初の予定通り計画を進めていく。
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