研究課題/領域番号 |
23791760
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
平間 裕美 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (50552725)
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キーワード | 腎癌患者 / 転移性癌患者 / 抹消血 / DR-5 |
研究概要 |
癌患者の血液中を循環する微量の癌細胞(末梢血循環腫瘍細胞Circulating tumor cell:CTC)を測定することは、癌の正確な病期診断のみならず治療効果判定に有用である可能性がある。泌尿器科領域では、進行性前立腺癌についてはその高い検出率から臨床応用への期待が高まっている。しかし腎癌については今まで特異的抗体がなかったため、検出率が低く臨床応用されていないのが現状である。我々はこれまでに腎癌の細胞膜上にDeath Receptor(DR)-5が高率に発現していることを報告し、さらにDR-5に対するモノクローナル抗体を作成しin vivo,in vitroでの治療効果に関する知見を得ている。今回の研究の目的は、この抗DR-5抗体を用いて腎癌患者におけるCTC検出システムを確立することである。これにより、腎癌治療戦略構築に大きく貢献すると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予備実験として、腎癌細胞を混在した検体でCell Search Systemを使用し、癌細胞が抗DR-5抗体に標識されることは確認できている。腎癌患者においてCTC検出が出来るか評価する事が第一の目標であるが、限局性腎癌患者の末梢血でDR-5陽性癌細胞の検出率が低いことを経験している。また、腎臓より最初に流出する腎静脈の血液を用いてCTC測定が可能かどうか実験も行ったが、コンタミネーションが非常に多くCTC測定には不適当であった。更に、腎癌に特異的に発現しているとの報告があるCAIX抗体を用いて予備実験を行ったが、腎癌細胞に染まらなかった。転移性腎癌患者の抹消血において検出が可能か検討中だが、患者数が少ないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
転移性腎癌患者における末梢血でのCTC測定を継続する。抗CK抗体(FITCで標識)と抗DR-5抗体(PEで標識)を用いた評価だけでなく、抗CK抗体のみの評価(通常CTC測定で使用される抗体)も行う。この理由としては、標識されているPEでは解像度が悪い印象があるために、CTC測定が困難ではないかと考えているためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
転移性患者の治療は分子標的治療±手術が基本であり、腎癌患者を分子標的治療毎に群別化しCTC測定を行う。同一患者においては、各イベント毎(手術前後、新病変出現時、分子標的治療開始前と開始後1か月目など)にCTC測定を行う。 上記でCTC測定が可能であれば、下記内容について解析する。 【1】診断時CTC値と無増悪生存期間、全生存期間の相関関係を解析する。また、新病変出現時にCTC測定を行い、病勢進行とCTC値との相関関係を解析する。これにより、腎癌患者におけるCTC値の指標(予後不良と判断する数値)を確立する。これにより、腎癌患者の正確な病期診断が出来、リスク分類のパラメーターの1つになる可能性がある。 【2】治療前後CTC値の変化と無増悪生存期間、全生存期間の解析を行い、治療効果判定にCTC測定が有用となり得るかを検討する。このことは癌転移の早い段階(微小転移段階)での検知と早期治療が治療効果や長期成績の向上につながる可能性が高まっている。
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