研究概要 |
1.膣拡張による腹圧性尿失禁モデルにおける尿禁制機能の検討加齢ラットの評価に先立ち、若齢モデルにおける腹圧性尿失禁モデルの作成、尿禁制の評価を行った。尿禁制メカニズムの客観的な評価が可能なモデルとして経腟分娩モデルとして用いられる膣拡張による腹圧性尿失禁モデルラットを使用した。このラットを用いて膣拡張後の経時的な失禁圧、尿道内圧, 膀胱内圧上昇時の尿道反応の測定を行った。4,7日後に失禁圧は有意に低下したが14日後には元のレベルに改善した。またこの経時的変化に伴う各種サイトカインのmRNAレベルの発現の変化についても検討した。TNF-αなどの炎症性サイトカインは膣拡張直後にはsham群と比較して有意に上昇したものの4日目には有意な上昇は認められなかった。一方増殖因子の一つであるインスリン様増殖因子-1(IGF-1)は4日目、7日目と有意な上昇が認められ、尿禁制機能との負の相関が認められた。2.IGF-1投与による尿禁制機能の治療効果遺伝子組み換えヒトIGF-1を膣拡張1日前から7日間投与を行い膣拡張による腹圧性尿失禁の改善にどのような効果があるか検討を行った。Vehicle群、IGF-1(50,150μg/kg/day)の3群のうち、IGF-1投与群では膣拡張後4,7日目で失禁圧、尿道内圧, 膀胱内圧上昇時の尿道反応の有意な改善を認めた。またそれぞれの群の尿道組織におけるAktのリン酸化をWestern blotにて検討を行ったところIGF-1(150μg/kg/day)投与群においてAktのリン酸化の有意な亢進が認められた。(本年度研究のまとめ)IGF-1はラットにおける膣拡張による腹圧性尿失禁の改善にAktを介するシグナル伝達経路を介して寄与していることが考えられた。
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