本研究は前立腺神経内分泌細胞による前立腺癌のゲルゾリンを介する進展機構を明らかにすることが目的である。 上皮成長因子(EGF)10ng/mlを添加した無血清培地下での前立腺神経内分泌癌細胞株NE-CS培養上清により、ヒト前立腺癌細胞株LNCaP におけるアクチン調性蛋白ゲルゾリンの発現が亢進し、アクチンダイナミックスによる形態学的変化が生ずることを確認した。 RNA干渉法(siRNA)にてゲルゾリン遺伝子をノックダウンした前立腺癌細胞株siGel-LNCaPとコントロールsiRNAを導入したsiCont-LNCaPの浸潤能を比較検討した。 EGF10ng/mlを添加した無血清培地下でのNE-CS培養上清存在下において、亢進されたsiCont-LNCaPの浸潤能はsiGel-LNCaPで有意に抑制された。また、NE-CS培養上清にて亢進したLNCaPの浸潤能は、PLCγ阻害薬および細胞内カルシウムキレート剤BAPTA/AMにより阻害された。これらの一連のNE-CS培養上清によるLNCaPの結果はNE因子の一つであるニューロテンシンにより再現され、NE-CS培養上清中にニューロテンシンを含み、濃度依存性にニューロテンシン受容体の発現、浸潤能が亢進することを確認した。 本研究から、EGFの刺激により前立腺神経内分泌細胞から分泌される神経内分泌(NE)因子の一つニューロテンシンが前立腺癌細胞におけるゲルゾリンを介する浸潤能を亢進させる可能性が示唆された。
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