本研究では、結石形成のメカニズムと女性の結石罹患率が低い理由を解明するために、酸化ストレスと細胞障害の観点から結石形成の性差について検討を行った。さらには細胞障害や酸化ストレスとの関わりを解明することで、新たな結石予防法の開発を目的とした。 平成23年度における研究では、腎尿細管細胞とミトコンドリア障害からみた性差について研究した。雌雄のマウスにシュウ酸前駆物質を投与し、結石形成に至るまで、腎尿細管細胞とミトコンドリア障害について、雌雄の違いを明らかにした。結石形成モデルマウスの微細構造は、まずミトコンドリアの変形がおこり、尿細管細胞、微絨毛の崩壊、尿細管管腔内への崩壊物質の脱落、そして崩壊物質が凝集することで結晶核の形成を起こしていることが明らかになった。メスのマウスでは、これらの形態変化が、オスに比べて、やや遅く経過している傾向が見受けられた。 平成24年度では結石関連遺伝子であるオステオポンチン(OPN)について検討を行った。雌マウスにおけるOPNの発現は、雄に比べて、結石形成前の発現量が少なく、発現の増加が遅かった。さらに、ノックアウトマウスを用いて検討ではwild typeに比べて、シュウ酸前駆物質の投与後、尿細管の微細構造変化が遅く、細胞障害が少なかった。そして結石の形成量が少なかった。さらに、メスのOPNノックアウトマウスでは、雄よりもさらに結石形成量が少なかった。 今回行った研究の成果はいままで明らかになっていなかった尿路結石形成初期の機序を明らかにし、ミトコンドリアの係わった細胞障害、酸化ストレスの関連性、重要性を明らかにするものであり、ミトコンドリア保護を通した新たな尿路結石予防の可能性が考えられた。そして、これらは、女性ホルモンの新たな作用のひとつである可能性が考えられた。
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