尿路結石は多因子疾患であり、遺伝因子に環境因子が影響し発症すると考えられているものの、詳細な発症機序はいまだ解明されていない。本研究は、疾患関連遺伝子の検討および機能解析を行うことで、尿路結石の新たな病態解明を目的とする。同定した病態解明が新たな治療法の開発につながると考えられる。 私たちは大規模ゲノムワイド関連解析を行い、尿路結石と強い関連を示す、4番染色体長腕および17番染色体短腕の2領域を確認し、新たな尿路結石関連遺伝子としてGPM6AおよびSHISA6を同定しているが、これらの転写産物である膜タンパクは、尿路結石の形成に関与することが予測されるものの、これらがカルシウム含有結石形成に与える影響についてわかっていない。そこで、本研究において、疾患関連遺伝子と考える遺伝子およびタンパクの患者尿中での発現を確認し、疾患との関連性が高いSNPsに対し、領域中のハプロタイプおよび別領域のSNPsによる相乗効果を検討し、効率的な再発リスク診断法を確立したいと考える。 平成23年度の成果として、(1)尿路結石における大規模ゲノムワイド関連解析および疾患関連遺伝子の機能解析について、米国泌尿器科学会および日本泌尿器科学会総会において報告を行った。(2)当院尿路結石外来に通院する患者に対し、本研究計画について説明(インフォームドコンセント)し、書面による同意を得られた患者に対し、採尿、採血(抹消全血約5ml)を行った。尿は採尿後速やかに-80℃にて凍結保存し、後の解析に備えている。末梢血については高速遠心機にて遠心後、末梢白血球の濃縮物であるバフィーコートを採取し、-80℃にて凍結保存した。今後、検体数が確保できた段階にて、外部委託したうえでゲノムDNAを抽出する予定である。なお、尿および末梢血採取にあたっては、患者からの採尿、採血時点で連結可能匿名化を行い、個人の特定ができないよう配慮した。
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