研究課題/領域番号 |
23791776
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
惠谷 俊紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30600754)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | MCL Heat Therapy / Photodynamic Therapy / 浸潤性膀胱がん |
研究概要 |
浸潤性膀胱がんでは、治療法として根治的膀胱全摘除術などの侵襲の高い治療法が選択され、QOLを著しく低下させている。私たちは、正電荷リポソーム抱埋型磁性ナノ粒子(Magnetite Cationic Liposome:MCL)を用いた磁場誘導組織内加温法(MCL Heat Therapy)の癌に対する治療効果を研究し、様々な癌の増殖抑制効果を報告してきた。また、新規光感受性物質フラーレンと紫外線による膀胱内Photodynamic Therapyの開発を進め、表在性膀胱がんに対する治療効果を認めている。このMCL Heat TherapyとPhotodynamic Therapyを融合することにより、浸潤性膀胱がんに対する保存的根治的治療法を開発することが目的である。私たちは、BALB / c Slc-nu/nuにT24:1×106 cells / 100 μl (in PBS)を背中の左右に皮下移植し、膀胱がんモデルマウスを作成した。次いで、MCLの注入の有無により2群に分けた(1)MCL注入群 (2)MCL非注入群。MCLの濃度は33mg/ml、用量は100μ/回、2方向から腫瘍中心部に5μ/minの速度で注入した。両群共に交番磁場を照射し、照射時間は30min/回、1週間に3回施行し、施行前に毎回MCLを注入した。治療開始後3週間でマウスをsacrificeし、病理組織学的検討を行った。鉄染色にて、MCLの集積を確認し、画像処理にてnecrosis areaを計測した。MCL注入群におけるnecrosis areaの拡大を認めた。また腫瘍細胞増殖評価のため、PCNA染色を施行し、治療群における腫瘍細胞増殖活性の抑制を確認した。腫瘍免疫評価のため、CD8染色およびHSP70の蛍光免疫染色を施行し、治療群におけるCD8陽性Tリンパ球の誘導およびHSP70の誘導を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、昨年度に、膀胱がんに対する正電荷リポソーム包埋型磁性ナノ粒子(Magnetic Cationic Liposome:MCL)を用いた温熱治療(MCL Heat Therapy)およびフラーレンを併用したphotodynamic therapyの治療効果および病理組織学的検討を予定していた。MCL Heat Therapyの膀胱癌に対する腫瘍縮小効果および腫瘍免疫の強化については昨年度に証明した。しかしながら、予想以上にモデルマウスの作成(腫瘍の生着と両側の同程度の腫瘍サイズの成長)とMCL Heat Therapyの実施(磁場強度と温度の調節、サーモグラフィーを用いた温度計測および動物実験用CTによる腫瘍サイズの計測)に時間を要し、Photodynamic therapyの治療効果および病理組織学的検討が施行不可能であった。現在、隔週で実施している研究グループの報告会にて、現在の研究の進歩状況を検証し、学内外の専門家より適切な指示を受けている。さらに、当大学内の定期的な研究報告会にて、計画の妥当性と進歩状況を客観的に評価し、円滑に研究を進めるよう指示を受けている。
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今後の研究の推進方策 |
1. 紫外線最適波長およびフラーレン(C60-Glu1)の最適濃度の検討:膀胱がんモデルマウスに対し適宜紫外線波長を変更し、治療効果の高い波長を同定する。2. photodynamic therapy:フラーレンの投与方法で3群に分ける:(1)腹腔内注射 (2)局所注射 (3)表面散布。24時間後にUVA-1を照射する。その治療効果を腫瘍体積の変化および病理組織学的検査により解析する。3. アポトーシス関連タンパクについてウエスタンブロットによる解析:腫瘍縮小効果が認められたら、サンプル処理する。ただしチェックポイントタンパクは各細胞により元々の発現量が異なるため、各細胞間で総タンパク量をそろえてデータがとれない場合はそれぞれの細胞にてウエスタンブロットでバンドが見える条件にてサンプルを処理する場合もある。サンプルを泳動し、セミドライ法にてタンパクをメンブレンに転写し、次の各種抗体(PARP,cleaved,caspase3,8,9)にてウエスタンブロットを行う。4. MCL Heat Therapy+ Photodynamic Therapyの相乗効果について証明:Photodynamic therapyにてもっとも効果がある群を同定し、その実験モデルを対象とし磁性体を用いた温熱治療を行う。すなわちC60-Glu1投与後24時間後にUVA-1を照射する。その後腫瘍塊にMCLを注入し、交番磁場を30分照射することにより温熱治療を実施する。その治療効果を腫瘍体積の変化および病理組織学的検査により解析する。また(1)control群、(2)MCL heat therapy単独群、(3)Photdynamic therapy単独群、(4) MCL heat therapy+Photdynamic therapy併用群の4群に分類し、相乗効果についても検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品として、実験用動物・実験動物飼育費・抗体購入費用・一般実験試薬・解析委託料・英文校閲料・論文投稿料を予定している。謝礼金として、研究補助(1人×40日)を予定している。国内旅費として日本泌尿器科学会総会・日本泌尿器科中部総会に、成果発表予定である。また海外旅費として米国泌尿器科学会(AUA)等、成果発表予定である。
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